【背景・ねらい】

   海藻サラダや刺身のつまとして利用されている海藻「トサカノリ」は、伊豆諸島に広く分布し、重要な漁業資源となっています。しかし、年により分布する場所や現存量が異なるなど、資源的には不安定なことが知られています。そこで、これまで島しょセンターで培ってきた海藻の人工採苗技術を用い、トサカノリ資源の積極的な増殖手法を確立するための研究を行いました。

 

【成果の内容・特徴】

① 効率的な採苗方法の開発

 トサカノリ成熟藻体から胞子を塊状に集め、それを滅菌海水にとり胞子液を調整し、基質に着生させる採苗方法(胞子液採苗)を確立しました(図1)。これまでの方法(藻体から直接スライドグラスに胞子を着生させる)と比較し、スライドグラスに均一に胞子を着生させることができました(図2)。また、この胞子液を用いることで、様々な基質に胞子を均一に着生させることが可能となりました。

② 種苗の生長に適した環境条件の把握

 人工採苗により得たトサカノリ胞子をそれぞれ異なる水温で比較培養した結果、四分胞子および果胞子ともに24℃区で最もよい生長が認めらました(図3)。また、通気条件および培養容器の種類を変え培養実験を行った結果、培養開始早期に通気を行う方法により生長が良くなる傾向が確認されました。

③ 胞子が着生しやすい基質の検討

 胞子液採苗を行い、数種の基質(天然石、建築用ブロック片、コンクリート片、レンガ、クレモナロープ)への胞子の着生実験を実施しました。結果、1cm(2乗)あたりの着生密度(採苗後約40日目に肉眼で確認できた種苗を計数)が最も高かったのは天然石(10.3個)、最も低かったのはロープ(2個)でした(表1)。さらに、この種苗が着生した基質(図4)を天然海域へ移植し、種苗の生長経過を観察した結果、藻長は20㎝以上に生長し、成熟することも確認しました(図5)。

 

【成果の活用と反映】

 胞子液採苗により様々な基質にトサカノリ胞子を着生させることができました。今後は、これら種苗を着生させた基質、あるいは生産した種苗を天然海域へ効率よく移植する方法を検討します。

 (早川 浩一)


  トサカノリ増殖技術開発の取り組み