【背景・ねらい】

   アカハタは、小笠原諸島では「アカバ」という名で親しまれ、美味であることから、食材として戦前から今日まで広く島民に利用されてきました。特に、身をブツ切りにした味噌汁は島の伝統的な郷土料理です(図1)。一方、本種は漁業の対象としても重要であり、高価格で本土に出荷されていますが、長年の漁獲によって本種の資源減少が懸念されています。そのため、小笠原島漁協では、平成10年から自主的に禁漁区を設定して、本種資源の保護に取り組んでおりますが、当センターでも、アカハタ資源の状態を把握し、その管理と方策を提案するための科学的データーの収集を行いました。

 

【成果の内容・特徴】

①   平成27年度から28年度にかけて得られた全長8.9~40.0 cmの1,116尾のアカハタについて、魚体測定と耳石、生殖腺の観察を行いました。

② 耳石の横断面(図2)の輪紋を計数して年齢査定を行った結果、0本から26本まで認められたので、本種の寿命は26歳と推測されました。そして、全長-年齢の関係式から、本種の平均的な年齢と全長および体重は、5歳で23 cm、156 g、10歳で31 cm、390 g、15歳で34 cm、534 g、20歳で35 cm、604 g、25歳で36 cm、635 gと算出されました(図2、表1)。

③ 現在、主に200 g以上のアカハタが漁業の対象となっておりますので、本種の漁獲開始年齢は6歳と考えられました(表1)。

④   平成27年の小笠原島漁協における水揚量から年齢別の漁獲尾数を推定した結果、漁獲の中心は7~13歳と考えられました(表2)。毎年このような年齢別漁獲尾数の一覧表を作成することで、アカハタ資源の動向が把握できます。

⑤ 漁獲サイズのアカハタ(体重200 g以上)は、未成熟個体はほとんど含まれていないことがわかりました(図3)。

⑥ アカハタ卵巣の発達状況から、本種の産卵期は4~6月で、産卵盛期は5~6月と考えられました。また、産卵は満月前後に行われていました。

 

【成果の活用と反映】

 これまでの調査で、本種の資源管理に必要な基礎的なデーターを収集することができました。今後は、これらのデーターを基に、小笠原諸島海域におけるアカハタの資源量推定や毎年の資源変動を把握して、適切な資源管理手法を関係機関に提案していきます。

(川辺勝俊)


  小笠原におけるアカハタ資源調査の取り組み