大島事業所では重要な漁業対象種テングサの生育状況を把握するため毎年、漁期開始前に伊豆大島周辺にて枠取り調査を長年にわたり行っています。枠取り調査から得られたデータを整理、解析することでテングサのうち、マクサおよびオオブサの資源動向、水深別の分布特性が見えてきました。さらにテングサ漁業において商品価値を落とすことから問題とされる付着珪藻について、除去試験を試みました。
船の上から海を覗き込むと透明度の高い南の海でもせいぜい50m程度までしか見ることができません。それより深いところにいる魚や海底の様子を可視化するには海水中をよく伝わる超音波を用います。「みやこ」ではいくつかの種類の音響機器を搭載し、超音波により海の中の様子を探る調査をしています。超音波により海底の地形や魚群、海流などの情報を得ることができるようになっています。これらは漁業者が漁場を選択する際の指標や、漁業資源を調査するうえでの基礎資料となります。
有機物が堆積しやすい東京湾奥の海底は、夏秋期の貧酸素化や硫化物の影響により二枚貝の生息環境が一段と厳しくなり、幼生の着底や成育を阻害します。しかし、過去にヘドロ状の海底を覆砂※1して景観整備したお台場海浜公園の人工造成干潟では二枚貝が予想外に着定し、アサリなどの潮干狩りが毎年行われています。そこで、今後の浅場造成の基礎資料にするため、底質の性状に応じて各種二枚貝が分布する特徴を明らかにしました。
平成25年10月16日に伊豆諸島北部を通過した台風26号の爪痕は大きく、土砂災害により磯根漁場が埋没するなど、深刻な被害が発生しました。そこで、大島事業所では被災した漁場を潜水調査して被害状況を確認するとともに、その後の推移を追跡しています。これまでに得られた磯根漁場の被害とその後の推移に関して得られた知見を磯根漁業の早期回復に向けた施策に反映させています。
八丈島におけるカツオ曳縄漁の効率的な操業方法を提案するために、カツオ漁場予測の精度向上を目的とした手法開発を実施しました。従来得られている環境データに、海面高度情報を予測因子に加えることで、予測精度の向上が確認されました。また、記録式標識を導入し、カツオの遊泳水深や詳細な移動経路を把握することに成功しました。
小笠原における重要な漁獲対象種であるメカジキについて漁業の効率化を図るため、漁場位置と環境情報の収集を行ない、漁場予測の指標性を検討しました。その結果、海洋に点在する中規模渦と漁場形成との関係性をある程度把握し、海面高度データがメカジキ漁場予測の指標となる可能性があることがわかりました。
国内アワビ類における本病の知見は乏しく、その疾病リスクについては国を含め現在も評価中で知見の収集が急がれています。今回、フクトコブシから検出されたキセノハリオチス感染症原因菌(以下WS-RLO)が、クロアワビおよびメガイアワビには感染しないこと、フクトコブシにおいて高い死亡率にならないことを確認しました。また、フクトコブシから検出されたWS-RLOには既報のものと塩基配列に変異があることを確認し、その簡易な判別方法を新たに開発しました。
カギイバラノリ陸上養殖における、より効率的、安定的な生産技術の開発を行いました。計画的に生産した人工種苗を屋外養殖に利用する周年養殖技術を確立し、また培養の際、藻体の生長の妨げになる雑藻類の繁茂抑制方法を検討しました。さらに、安定供給を行ったカギイバラノリの利用手段として、人工種苗を天然海域へ移植する方法やブドの保存・加工方法についても検討しました。
近年、多摩川を遡上する天然アユの数は増加し、マスコミなどに取り上げられ、多摩川を遡上するアユの姿は、東京の春の風物詩ともなっています。一方で「たくさんのアユが多摩川に戻ってきたと聞くけれど、多摩川の上流や中流にはどのくらいのアユが遡上しているの?」と都民から質問されます。そこで多摩川中流域での遡上実態を把握するため、定置網による採集を行い、中流域までのアユの遡上数を推定しました。