【背景・ねらい】

 台風26号により発生した土石流により大島の磯根漁場では深刻な被害が生じました。そこで、大島事業所では、被害発生直後から特に懸念された5地点で潜水調査により被害状況を把握するとともに、その後、1年間余にわたり追跡調査を実施しました(海底と動物生息状況調査)。また、磯根の重要海藻であるテングサとアントクメについては、大島の過去の調査との比較を通じて被害状況を把握しました(テングサ調査及びアントクメ調査)。

 

【成果の内容・特徴】

① 海底と動物生息状況調査:長根、前浜、弘法浜、大宮沢、黒根の5地点で調査しました(図1)。元町周辺の3地点(長根、弘法浜、前浜(写真1、2))は平成25年11~12月の時点では特に砂の堆積が著しかったのですが、平成26年6月には砂が減少する傾向が確認されました(写真3)。これらの地点では土砂の減少に伴ってフクトコブシ、イセエビ等の磯根資源に一部の場所で回復の傾向が見られましたが、その後26年9月での状況は6月と同様でした。その他の2漁場(大沢、黒根)は、災害直後は土砂の流入が確認されたものの、波の力などにより速やかに土砂が減少したと推定され、平成25年11~12月、26年6月、9月を通じて大きな変化はありませんでした。

② テングサ調査:平成27年2月25日~3月30日の調査では、テングサ漁場である元町周辺の2地点(長根、前浜(写真4))での着生量は過去10年間の平均量より少ない結果となったものの被災による直接の影響については不明でした。また、3地点(黒根、弘法浜、大宮沢)については過去のデータがないので、被災前後の変化については不明でした。なお、黒根にはテングサの着生がありましたが、弘法浜及び大宮沢にはありませんでした。

③ アントクメ調査:平成26年6月3日~7月30日の調査では、昨年の台風による漁場被害を受けた元町地区及び野増地区を含む島の東側に、アントクメが多く分布する場所があることが確認されました。また、平均藻長が弘法浜(写真5)で昨年よりも長かったことから、藻体の生長も昨年より良好だったことが示唆されました。被災によるアントクメへの被害は特にみられませんでした。

【成果の活用と反映】

 調査を通じて台風による大島の磯根漁場への影響を広く確認することができました。大島事業所では、今後も調査を予定しており、得られた知見を都庁内で共有し、台風によって受けたダメージの早期回復施策に反映させていきます。

 (木本 巧)

大島の磯根漁場の推移