【背景・ねらい】

  小笠原諸島では、水深400~600mにおいてメカジキ・メバチ・ソデイカを対象とした深海たて縄漁業が盛んです(図1,2)。その中でもメカジキは、総漁獲金額の4割を占める重要な漁獲対象種です。しかし、その漁獲量は年変動が大きく、漁場が特定しづらい特徴があり、より効率的な漁獲が望まれています。本事業では、メカジキ漁場における海洋環境調査、餌料環境調査、漁場形成位置の把握を行ない漁場予測の指標性を検討することで、メカジキ漁場予測システムの構築を目指します。

 

【成果の内容・特徴】

① 産卵期における漁場形成

・平成17年から26年にかけての4月から6月(産卵回遊期)の日ごとのCPUE(尾/1日1隻)と表面水温の関係から、父島周辺の表面水温が24℃を超えるとメカジキの漁獲個体数が高位で安定することがわかりました(図3)。

・平成12年から22年までの父島の西海域と東海域漁場における総漁獲量は、5月から9月(産卵期)にかけては父島西海域が多く、その他の月では東海域が多いことがわかりました(図4)。

・以上の結果から、産卵回遊期から産卵期は表面水温が24℃を超えるとメカジキが父島周辺海域に集まり、漁場は父島の西側に形成されやすいことがわかりました。

・平成22年から25年にかけての漁獲水深を漁業者より聞き取った結果、5月から9月は、その他の時期に比べて浅い水深でもメカジキが漁獲されることがわかりました(図5)。

② 中規模渦と漁場形成

・平成17年から25年にかけての2,067個体のメカジキの漁獲位置情報と中規模渦との位置関係を解析した結果、暖水渦では渦の中心から西側で漁獲される割合が高く、冷水渦では渦の中心から東側および南西側で漁獲される割合が高いことがわかりました(図6)。

・平成21年から25年にかけての日ごとのCPUEと、海面高度データから抽出した中規模渦と漁場との位置関係を解析した結果、5月から9月の産卵期は、渦の位置と漁獲に関係性は見られませんでしたが、その他の期間は距離の比が0及び1、即ち漁場に渦の中心から縁辺部が位置するときにメカジキがよく釣れる日の割合が高いことがわかりました(図7)。 

【成果の活用と反映】

 本事業の結果より、産卵期の漁場形成や中規模渦と漁場形成との関係性をある程度把握し、海面高度データがメカジキ漁場予測の指標となる可能性を見い出しました。しかし、中規模渦の空間スケールは数百キロ、時間スケールは数ヶ月に及ぶ事もあります。

 (田中 優平)

メカジキ漁の効率化に向けて