【背景・ねらい】

 漁業を行うにあたり、目で見ることのできない海の中の情報を知ることは魚がどこにいるのか考える上で非常に重要です。深い海に潜るには多額の費用と時間がかかり、危険を伴います。船上から海の中の情報を迅速に収集するためには超音波が適しています。 

船底から発射された超音波は、海底や魚群に当たると反射して戻ってきます。この超音波を受信して情報を解析することにより、魚群や海底地形、流向や流速などを知ることができます。海底地形や潮流は漁場を選択する際の情報となり、魚群探知機やソナーは、漁場での魚の動静を知る手掛かりとなります。これらの音響機器を活用することで、資源管理を行う上での重要な指標のひとつになると期待されています。

 

【成果の内容・特徴】

① 御蔵海山では、計量魚探でデータを収集しながら水中スチルカメラ沈め、反応のほとんどがキンメダイであることを確認しました(図1)。また、一都三県キンメダイワーキンググループの共同調査である「キンメダイ漁場環境調査」では、三宅島周辺の第2大野原海丘において、計量魚探調査を行い、時刻や潮流の変化による魚群の分布状況を調査しました(図2)。

② 大島波浮口から大室出し、利島北西、第2大野原海丘、御蔵島周辺、御蔵海山では、海底地形探査装置を使用して海底地形調査を行いました(図3)。400本の超音波ビームを使用し、船の左右方向の海底をとらえることができます。同時に魚群探知機では探知できない斜面直上の魚群を確認しました(図4)。

③ 沖ノ鳥島近海では、船の全周方向に超音波を送波できるソナーを使用し、沖ノ鳥島近海に3か所設置した中層魚礁の位置や深度を測定するとともに、周辺の魚群を探索し、曳縄操業試験を行って、カツオ・マグロ類が魚礁周辺に効果的に蝟集されていることを確認しました(図5)。

④ ほとんどの航海で潮流計を稼働し、表層から深度100mまでの潮流の向きと速さを計測し、そのデータを収録しました。計測結果は直ちに電子メールによって事業所に送信され、「海の天気図」を作成するための基礎データとしました(図6)。また各種調査実施時には潮流を考慮し、調査位置を決定するための参考としました。

【成果の活用と反映】

 海底地形探査装置により得られた海底地形と、計量魚探で収集した魚群データ、潮流計のデータから海山での魚群の形成要因を検討する基礎データを収集しました。また、漁場選択に重要な情報である海底地形や日々変化する潮流など、漁業関係者に情報提供していきます。

 (妹尾 浩太郎)

漁業調査指導船「みやこ」による音響調査