カギイバラノリ養殖における生産性向上技術開発(より効果的、安定的な生産技術の開発を目指して)
【背景・ねらい】
八丈島の郷土料理「ブド」の原材料となる「カギイバラノリ」の安定供給のため、平成21年度から23年度まで「カギイバラノリ養殖技術開発研究」を実施し、天然藻体を利用した養殖技術を確立しました。しかし、天然藻体に依存した養殖では、養殖時期が制限されること、また、雑藻類等の混入により藻体増殖率が低下する等の課題も明らかとなりました。よって、これらを解決し、より効率的、安定的な養殖技術の確立を目指すための研究を行いました。
【成果の内容・特徴】
① 人工種苗を利用した周年養殖技術の確立
・室内実験において、カギイバラノリの成熟に適した環境条件を検討し、長日環境(光周期14時間明期:10時間暗期)が成熟を効率よく誘起する要因のひとつであることがわかりました。
・人工種苗を用い屋外養殖試験を行ったところ、天然の海藻と変わらない増殖率で培養が可能であることがわかりました。
・これらの結果、計画的な種苗生産を行い、得られた人工種苗を屋外養殖に利用して1年を通して養殖を行う「周年養殖」の技術を確立しました(図1)。
② 雑藻類の繁茂抑制方法の検討
培養水槽を遮光することで雑藻類の繁茂が抑えられました。カギイバラノリ藻体が一定の生長率を維持しながら雑藻類の繁茂を抑えるための効果的な遮光率は30%~50%であると考えられました(図2)。
③ 天然海域への移植方法の検討
人工種苗を天然海域へ移植するための基質について検討しました。種苗をネット地に固着させたところ、離脱せずに生長することが確認されました。さらに、ネット地に直接胞子を付着させることが可能であることもわかりました(図3)。
④ ブドの保存・加工方法の検討
ブドのパッケージ商品化を想定し、異なる保存形態で冷蔵したブドの生菌数の経時変化を調べました(表1)。また、一定期間保存可能な加工品として、ブドの凍結乾燥品を試作した結果、加水調理することで冷凍保存のブドと食感があまり変わらない製品ができることがわかりました。
【成果の活用と反映】
天然の藻体に依存せず1年を通して養殖を行うことができる「周年養殖」技術を確立しました。
今後は、島内におけるカギイバラノリの安定供給に寄与してもえるよう、これらの技術を関係漁業者へ普及していきたいと考えています。
(早川浩一)