【背景・ねらい】

 伊豆大島ではテングサの内、マクサおよびオオブサを主に漁獲しています。これらの海藻を今後も持続的に利用していく上で、資源動向、分布特性などを把握することが重要です。そこで長年蓄積された枠取り調査結果を整理、解析し伊豆大島におけるマクサおよびオオブサの資源動向、水深別の分布特性の解析を行いました。加えてマクサに付着した付着珪藻のタンパク質分解酵素による除去試験を試みました。

 

【成果の内容・特徴】

①  マクサおよびオオブサの資源動向について、1983年から2014年まで各年の着生量の直線回帰分析を行いました。マクサ、オオブサ共に単年度では着生量に増減はあるものの回帰係数には有意な傾向は見られず資源動向は長期的には横ばいと考えられました(図1、図2)。

②  マクサおよびオオブサの分布特性について、水深と着生量の関係を近似線解析しました。その結果、マクサの着生量と水深についてR(二乗)値が最も高い回帰式は2次の多項式曲線となり水深4~9mで最大になると推定されました(図3)。また、オオブサの着生量と水深についてR(二乗)値が最も高い回帰式は指数曲線となり水深0~1mまでの極めて浅い水深で最大になると推定されました(図4)。

③  付着珪藻の除去について、マクサに付着したLicmophora.spp(図5)を対象にタンパク質分解酵素(トリプシン)を用いた試験を行いました。その結果、トリプシン濃度0.15%、水温40℃の条件で40分以上処理した試験区ではLicmophora.spp細胞の除去率が高くなりました。(図6、図7)。

【成果の活用と反映】

 伊豆大島におけるマクサおよびオオブサの資源動向は長期的には横ばいであり、今後も資源を有効に活用していくことが重要です。また、マクサおよびオオブサの分布特性について、マクサは水深4~9m、オオブサは水深0~1mで着生量が最大となることが示唆され、種による分布特性の違いが見えてきました。これらの知見を今後、テングサ藻場の造成に役立てていきます。

付着珪藻のLicmophora.sppについて、トリプシンを40分以上作用させることで除去効果が認められました。今後は漁業現場で活用できるよう、効果を保証しつつもより安価な付着珪藻の除去方法を模索していきます。

 (飯島 純一)

 

 伊豆大島テングサ調査