【背景・ねらい】

  カツオの資源情報を含めたカツオ曳縄漁の漁場および漁場形成についてモニタリングすると同時に、現段階では予測要因となっていない海面高度データと漁場位置の解析を実施し、カツオ回遊域の海洋環境をより詳しく把握します。また、記録式標識(アーカイバルタグ)によるカツオの行動生態を把握することで、海洋環境とカツオの行動生態の両視点から、より精度の高い漁場予測技術について検討しました。

 

【成果の内容・特徴】

① カツオ漁業モニタリング:八丈島におけるカツオ曳縄漁の漁獲量は、平成18年以降不漁傾向が継続し、平成26年漁期は過去最低の水揚量を記録しました(図1)。また、資源量指数となる1隻当たり漁獲量(CPUE)も豊漁であった平成17年以前と比較すると約30%減少しました(図2)。なお、平成8年以降のCPUEを標準化し、中西部太平洋まぐろ委員会(WCPFC)で公表した結果、カツオの資源評価について「縁辺部での来遊量の減少」とのコメントが記載されました。

② 漁場の海洋条件把握:調査指導船:「たくなん」によるカツオ曳縄調査により漁獲地点での海洋環境を把握した結果、水温19~21℃台、潮流場は北から東方向(図3)、海面高度-20㎝~10㎝で傾斜のある地点(図4)での漁獲が多いことが明らかになりました。

③ 標識放流と行動生態把握:標識放流を3か年で延べ506尾実施し、再捕は24尾(再捕率4.7%)となりました。再捕位置は東北沖が多く、八丈島よりも南で再捕される個体も確認されました。また、記録式標識を39個体導入し、1個体の再捕結果から遊泳水深、水温、照度のデータ、日別の移動位置・昼夜の分布水深の違いなど生態的知見を収集しました(図5、6)。

④ カツオ漁場予測と検証:人工衛星で得られる水温情報(19~20℃台)および海面高度情報(+4~10㎝、傾斜域)を基に漁場予測を実施し、調査船による実証試験を行った結果、操業船平均以上の漁獲が得られた割合が24年度33%(n=9)から26年度75%(n=8)まで増加しました。

【成果の活用と反映】

 海面高度情報を加えたことにより予測精度が高まり、その予測結果をもとに、漁業者への効率的な操業を支援します。一方、近年、カツオ漁業は全国的な不漁傾向にありますが、記録式標識によるカツオの行動把握から、漁場形成因子をカツオの視点から再検討し、その成果を漁業者に提供することによりカツオ曳縄漁の操業を支援していきます。
 (堀井 善弘)

海面高度情報を用いたカツオ漁場予測精度向上研究