日本最大のキンメダイ漁場である伊豆諸島海域では、他県漁船も多く操業を行っており、乱獲にならないよう各都県が協調し、資源管理を進める必要があります。そこで、漁業者の協力を得て、キンメダイの年齢組成やCPUE(1日1隻当り漁獲量)等の調査を継続してきた結果、資源管理に必要な知見が明らかになってきました。
大島事業所では、キンメダイの移動経路等を把握するため、伊豆諸島北部海域において、標識を装着したキンメダイの放流を実施し、再捕※1の情報を収集してきました。平成12年から開始した標識放流の実績は、合計1,359尾となり、これまでに47尾が再捕(再捕率※23.5%)されました。今回、これらの結果を取りまとめましたので報告します。
三宅島のテングサ(マクサ)漁場は、平成12年の大噴火によって壊滅的な被害を受けました。その原因として、噴火由来の泥(微粒子)が漁場に堆積し、マクサの胞子の着生を阻害していること等が考えられます。大島事業所では、漁場の回復状況を把握するため、マクサの着生状況や堆積粒子等の調査を行っています。
八丈島では、かつて島を代表する水産物であったテングサが激減してしまいました。その要因を明らかにするために、テングサの盛衰と海洋環境に関する解析を行ったところ、近年の八丈島は栄養塩濃度の低い黒潮の本流もしくは外側域に位置することが多く、その影響によりテングサが減少していることが明らかとなりました。また、八丈島が継続して黒潮内側域に位置することで、テングサの資源は一時的に回復することが明らかになりました。
カツオ曳縄漁は八丈島における基幹漁業の一つですが、近年不漁が続いています。そこで、カツオの回遊経路を把握するために、標識放流を実施し、多くの再捕データを得ることができました。また、魚体測定結果と併せて解析することにより、八丈島周辺海域からのカツオの回遊モデルを推定することができました。
流域人口が約2,900万人の東京湾は、湾内に窒素・リン等の栄養塩が流入するほか、堆積泥から栄養塩が溶出するため、プランクトンが異常発生して海底に堆積します。水温が上昇し上下の鉛直混合が起こりにくい夏秋期は、堆積物の分解が活発になり、その際、溶存酸素を大量に消費して底層の貧酸素化が進みます。酸素量が極端に低下すると、底生生物が大量死します。そこで、二枚貝をとおして実態を把握するとともに、漁業者情報を参考に生息場の改善策を検討しました。
島外出荷の難しいゴマサバの利用促進を目的として、骨まで食べられる「ゴマサバフィレ」を試作するとともに、その商品化に向けたアンケート調査を実施した。その結果、30歳代の主婦層を中心に、①手軽に調理ができる食材②子供に安心して食べさせることができる食材③地元の魚で作ったカルシウム豊富な加工品として、商品価値をアピールすることが重要であることが分かった。
多摩川における天然アユの遡上状況を把握するために多摩川下流にて定置網による採集と標識放流調査を実施しました。また、近年増加傾向にある天然遡上アユをスムーズに上流へ遡上させるために、簡易魚道などによる遡上促進の取り組みを実施しています。
大島事業所では、漁業調査指導船「やしお」(43トン)を用いて三宅島周辺の代表的な底釣漁場である三宅島西沖、南西沖漁場、第一及び第二大野原漁場における水温観測を毎月実施しています(図1)。これらの漁場の、平成23年の水温データを解析したところ、水温変動が類似した漁場を確認するとともに、深層域の水温が黒潮や冷水域の影響を受けてダイナミックに変動していることが分かりました。
平成24年3月に竣工した漁業調査指導船「みやこ」(図1)は、広域漁業調査指導船として東京都の広大な海域(わが国の排他的経済水域の38%)を網羅し、調査や漁場監視を行う使命を担っています。平成24年7月に連続15日間、伊豆諸島から南鳥島そして沖ノ鳥島までの総計3,620マイル(約6,697km)に及ぶ海域において、新たに導入した観測機器類を用いた各種データ収集やサンプルの採集を行いました。