【背景・ねらい】

 底魚一本釣(以下、底釣と記す)は、伊豆諸島海域における主要な漁業のひとつであり、漁を効率的に行う上で水温情報は欠かせません。そこで、大島事業所では調査指導船「やしお」を用い、三宅島をはじめとした各島周辺底釣漁場で、水深400~500mまでの水温観測を毎月実施するとともに、底釣漁場の水温観測結果の解析を行い、底釣の対象となる水深300m以深における各漁場の水温変動と特性、海況との関係について明らかにしました。

【成果の内容・特徴】

  • 各漁場の水深300m以深の水温は、黒潮の影響を受けた時に10~14℃台、冷水域に覆われた時には5~8℃台となっていました。また、観測期間を通じた水温変動は、三宅島南西沖漁場と第一大野原漁場、三宅島西沖漁場と第二大野原漁場においては類似した傾向を示しました(図2)。
  • 三宅島西沖漁場が黒潮の流軸付近にあった5月には、水深375m付近まで12℃台の水温となるなど、深層まで黒潮の影響が及んでいました(図3)。
  • 三宅島南西沖漁場において、冷水域に覆われた6月と10月を比較したところ、10月は6月より漁場と黒潮流軸との東西方向及び野島崎と黒潮流軸との距離が近く、8℃台の水温が水深250m付近まで達していました(図4)。

【成果の活用と反映】

 「やしお」で観測した水温データは、即日各漁協を通じて漁業者に速報され、漁場選択の判断材料として漁獲効率の向上に役立てられています。今後も連続的な漁場観測を行なうことで、黒潮流路等の海況変化と底釣漁場における深層水温変動との関連性や、底釣対象魚種の漁獲変動と水温変動の関連性について明らかにしていきます。


(森下浩司)

深海の水温はどう変わる?(三宅島周辺底釣漁場における深層水温変動) 図表