【背景・ねらい】

 テングサの漁場は、平成12年の大噴火時に伴う泥の流入、堆積によって壊滅的な被害を受けました。その後、平成17年より漁業活動が再開されましたが、漁獲量は噴火前の水準までに回復していません(図1)。
現在、北部海域を中心に、主に浅瀬(水深3mまで)に分布するオオブサが漁獲されていますが、やや深いところ(水深15mまで)に分布するマクサについては殆んど漁獲されていません。その理由として、深場では噴火に由来する泥の影響が残り、マクサの回復が遅れていると考えられます(図2)。そこで、毎年マクサの着生と周辺の環境を調査し、結果を関係機関へ報告しています。

【成果の内容・特徴】

  • 噴火以前におけるマクサは、南東部海域において1,000g/㎡以上の着生量で分布していた時期もありました。しかし、噴火以後に激減し、変わって西部海域に多く分布していることを確認しました(図3)。現在の南東部海域では、噴火直後にあった大量の泥(図4)は見当たらないものの、マクサの着生量に顕著な回復は見られていません。
  • 海底堆積粒子は、マクサ胞子の着生に対して障害となり得ますが、最近7年間は量的な変動が大きく、一定の傾向は見られませんでした(表1)。また、一部海域では、降雨の影響で陸から泥が流入し、海が濁る事象が見られました。これらの状況から、依然として陸部から粒子の供給が続いていると思われます(図4)。
  • 藻類の成長に必要な栄養塩DIN(硝酸塩の濃度)について、平成24年の調査では南東部海域(坪田)が西部海域(伊ヶ谷、錆が浜)よりも高く推移しました(表2)。なお、栄養塩についてはデータの蓄積量が少ないため、今後も調査を継続して着生量との相関関係を解析していく必要があります。

【成果の活用と反映】

 現在、西部海域では着生量の回復傾向が確認されていますが、栄養塩については南東部海域で高い値を示すなど、漁場によって状況が異なっています。
 今後も継続的にマクサの着生量と漁場環境のデータを集積し、因果関係を明らかにすることで効果的な振興策が図れるようにしていきます。


(木本 巧)

三宅島海域における磯根資源の回復状況(テングサの着生量と取り巻く環境) 図表