【背景・ねらい】

 東京都の島しょ漁業では近年、カツオ漁などの不振もあって、キンメダイへの依存度が高まり漁獲量が大きく増加しています。伊豆諸島海域では、他県漁船もキンメダイ漁を行っており、乱獲にならないよう協調して資源管理を進めていく必要があります。そこで当センターでは、漁業者の協力を得て、日々の漁場や漁獲量を把握するとともに、釣獲魚の体長測定と年齢査定を行い、キンメダイの資源動向の把握に努めています。そして漁業関係者がより適切な資源管理措置を選択できるよう、科学的情報の提供を行っています。

【成果の内容・特徴】

  • 漁獲量の推移:近年、キンメダイは日本の近海漁場で(図1)、年間5千トンから7千トン前後漁獲されています。伊豆諸島海域はその5割前後を占めており、日本最大のキンメダイ漁場となっています。この海域で操業しているのは、東京都のほか、千葉県、神奈川県、静岡県(以下、一都三県)などの漁船で、東京都の漁獲量は平成17年以降大きく増加し、一都三県の漁獲量に占める割合は平成23年には約32%になっています(図2)。
  • 尾叉長組成の特徴:キンメダイの尾叉長(図3)を平成9年から継続して測定した結果、小型魚がまとまって獲れ出した年以降、その魚群が成長しながら漁獲の主体になっていくことがわかりました(図4)。
  • 年齢組成の特徴:頭骨の中にある耳石(じせき、図3)を用いてキンメダイの年齢を推定した結果、神津島周辺漁場では3~8歳魚が、八丈島周辺漁場では5~13歳魚が主体となっており(図5)、南部漁場ほど高齢魚の比率が高いことがわかりました。
  • 資源動向の診断:資源水準を表す指標値の1つである、年齢別CPUEを解析した結果、八丈島周辺漁場では、この値が比較的安定しているのに対し、神津島周辺漁場では、2~5歳魚のCPUEがこの数年減少傾向にあることがわかりました(図6)。
  • これらの調査結果から、キンメダイの多くが、若齢期に北部海域で産卵した後、加齢に伴い南下しながら伊豆諸島南部海域など他の海域でも産卵し、分布域の拡大と再生産の安定化を図っているものと推測されます。

【成果の活用と反映】

 今回の調査で、神津島周辺漁場において2~5歳魚の魚群密度が近年低下傾向にあることが明らかになりましたが、キンメダイが南下するという生態から、数年後、八丈島周辺漁場でも魚群密度が減少する懸念もあります。このため、キンメダイの資源管理に関する協議会等において、この調査結果を踏まえ、資源管理措置のあり方を漁業関係者に提言していきます。

(米沢純爾)

キンメダイの測定から見えてくること(キンメダイの魚体特性と資源生態)図表