【背景・ねらい】

 伊豆諸島や小笠原などで水揚げされた魚介類の多くは、東京の市場に出荷されます。しかし、船による輸送には、コストや時間がかかることから、内地で水揚げされた魚介類と比べハンディとなっています。また、魚価安が続いていることからも、これまで以上に鮮度保持や品質向上への取組が不可欠となっています。そこで、東京ブランド対象魚種に選ばれた、イサキ(写真1)とタカベ(写真2)において、生産現場での漁業特性に応じた、鮮度保持に関する技術や、出荷方法など品質管理の面から検討を行いました。

【成果の内容・特徴】

  1. イサキの品質向上への取組

 漁獲後、(1)低温麻酔による処理と、血抜きと神経締めによる、(2)活〆(いけじめ)、眼色など外観の保全に努めるための、(3)敷氷による保存と輸送方法について、効果を検証し、その有効性を確認しました。従来までの出荷方法に、前記3つの手順を加えることで(図1)、鮮度(K値※1)の低下が抑えられ約1.7倍の時間、鮮度の延長に成功しました(図2)

  1. タカベの品質向上への取組

 刺網で漁獲されたタカベは、網から外すまでに時間がかかるため、鮮度にバラつきが出てしまいます。漁獲後、(1)網ごと水氷に魚体を貯蔵し冷却、雑菌の繁殖を抑え、体内の酵素の働きを抑制することが期待される(2)窒素氷※2の利用について、効果を検証し、その有効性を確認しました。従来までの出荷方法に、前記2つの手順を加えることで(図3)、鮮度の低下が抑えられ、約1.9倍の時間、鮮度の延長に成功しました(図4)

  1. 成果のとりまとめ

 今回イサキ、タカベの成果に、平成21年度より実施してきた、キンメダイ、ケンサキイカでの取組成果を加えて「高品質保持マニュアル」を作成しました。

 ※1 アデノシン三リン酸からヒポキサンチンまでの分解の状態で魚の鮮度を表す指標

 数式1

   ATP:アデノシン三リン酸、ADP:アデノシン二リン酸、AMP:アデノシン一リン酸、IMP:イノシン酸、HxR:イノシン、Hx:ヒポキサンチン

 ※2 窒素氷は、株式会社 昭和冷凍プラントの登録商標で、空気中から取り出した窒素を、氷の中に封入したもの

【成果の活用と反映】

 成果報告会などを通じて、マニュアルの配布により、漁業者に提案を行っていきます。これからも「島しょ」という地理的な制約を克服し、漁業の活性化に繋がるよう支援を行っていく予定です

(山口邦久)

写真1 写真2

写真1 イサキ             写真2 タカベ

図1 図2

 図1 イサキの出荷手順        図2 タカベの出荷手順

図3 図4

図3 イサキの出荷方法と鮮度低下の関係  図4 タカベの出荷方法と鮮度低下の関係