【背景・ねらい】

 「関東・東海海域における沿岸海況の短期予測研究(公)」において、水温観測ブイを黒潮の変動が把握しやすい三宅島の定置網漁場に設置しました。2005年度より3ヶ年の研究は終了しましたが、現在も引き続き、水温観測ブイの運用による水温データの取得と漁獲量との解析を行い、漁業振興に役立てます。

【成果の内容・特徴】

  1. 三宅島の定置網における2008年と2009年の5から8月期の総漁獲量は63トンで、アジ類50%、ブリ類33%でした。アジ類の内訳はクサヤモロ69%、オアカムロ24%、ブリ類の内訳はカンパチ45%、ブリ(3から5kg主体)33%でした(図1)。
  2. クサヤモロ、オアカムロ、カンパチ、ブリは、期間中、平均して漁獲されるのではなく、ある日に突出して多獲される特徴がありました(図2)。
  3. そこで、水温とこれら4魚種の漁獲量との関係について解析しました。クサヤモロ、オアカムロ、ブリについては、多獲日と漁獲が無い日における水温変動に大きな違いはみられませんでした。しかし、カンパチについては、多獲された日の観測各層(水深1、10、20m)における水温差は少なく、各層とも水温変動が下降傾向か安定していました(図3)。

【成果の活用と反映】

 水温観測データは、事前登録を済ませたパソコン及び携帯電話で一日4回入手でき、定置網漁業等に役立てられています。今後も水温データの収集と解析を行ない、定置網漁場において漁場水温の変動がブリ類(特にカンパチ)入網の目安になるか、引き続き関連性を明らかにしていきます。

(森下浩司)

図1

 図1 三宅島定置網魚種別割合(2008年と2009年5から8月期)

図2

 図2 漁獲量の日変動の一例

図3

図3 カンパチの多獲日と各層水温の関係