背景・ねらい

 伊豆諸島海域はキンメダイの主要漁場になっており、東京都の漁業者ばかりでなく、静岡県や神奈川県等の漁業者も操業しています。このため、キンメダイ資源の持続的な活用を目的に、漁業者間の協議による自主的資源管理が行われています。しかし、現在までの調査研究で、伊豆諸島での産卵は確認されているものの、仔稚魚期の分布生態や漁場加入機構については不明な点が多く、効率的な資源管理手法を考えるうえで大きな支障となっています。そこで、各種プランクトンネット調査により、キンメダイの初期生活史を解明し資源管理に役立てます。

成果の内容・特徴

  1. 2004年9月13から14日に、八丈島北方の黒瀬海域において(図1)、調査指導船「みやこ」でリングネット、改良型ノルパックネット、MTDネット、ボンゴネット(図2)の4種類のプランクトンネットを用いて仔稚魚の採集を行いました。
  2. 表層から水深約300mまでの採集調査により、各水深でキンメダイの仔稚魚を合計338個体採集しました。
  3. 複数の層を同時曳網したMTDネット調査では、水深50m付近で66個体と最も多く採集されました。さらに、表層近くでも採集されており、キンメダイは生活史初期の段階では比較的浅い水深に分布していることが分かりました。(図3、4)
  4. 今回の調査では孵化直後の体長1.9mmから、稚魚の特徴を持つ8.9mmまでの各発育段階の仔稚魚が採集されました。稚魚は特徴的な長く伸びた背鰭軟条と腹鰭軟条を有しており、体表には赤色素の分布が確認されました。(図5)

成果の活用と反映

伊豆諸島における、キンメダイ仔稚魚の鉛直分布の傾向を把握できたことから今後、キンメダイワーキンググループとも連携し、より成長した体長1cm以上の稚魚の分布生態と、若魚(イトヒキキンメ)の漁場加入機構の解明を進めていきます。さらに、伊豆諸島がキンメダイの産卵、仔稚魚の成育場所であることを踏まえ、資源管理をより効果的に推進し、資源の持続的活用を図っていきます。(前田 洋志)


調査海域と調査地点
図1 調査海域と調査地点
ボンゴネット
図2 ボンゴネット
St.1におけるリングネット(0m)、MTDネット
図3 St.1におけるリングネット(0m)、MTDネット
(25mから345m)による稚仔魚の水深別採集数
St.4におけるリングネット(0m)、MTDネット
図4 St.4におけるリングネット(0m)、MTDネット
(17mから194m)による稚仔魚の水深別採集数
St.1で採集されたキンメダイ稚魚(体長6mm)
図5 St.1で採集されたキンメダイ稚魚(体長6mm)