研究の背景とねらい

奥多摩やまめ(全雌三倍体ヤマメ)の生産・販売体制の強化や知名度の向上等を図るために、平成18年度に生産者、行政、財団、近隣市町村などで構成される「奥多摩やまめ振興協議会」が発足しました。奥多摩さかな養殖センターでは、奥多摩やまめの生産振興の一環として、これまで大型魚の鮮魚、活魚に限られていた奥多摩やまめの利用形態の拡大を図るため加工品開発に取り組むとともに、地域での料理実習の開催などによる普及も図りました。


成果の内容と特徴

  1. 1年魚(200g)における通常魚との差別化
     刺身の試食によって、通常のヤマメと奥多摩やまめ(ともに1年魚(約200g))の、色、味、脂ののり、水っぽさ、硬さ、好みについて比較した結果、通常魚は奥多摩やまめに比べて水っぽく、総合的な評価である好みでは奥多摩やまめが上回りました。(表1)
  2. 冷凍品としての利用方法の検討
     奥多摩やまめ3年魚(約1.5kg)のフィレーを用い、冷凍温度、保存期間及び保存方法について比較した結果、味覚の差は認められず、冷凍品も十分に商品として利用できることが確認できました。
  3. 加工品(燻製)の開発
     従来の燻製の製作手法を一部改良し、200gから1kgサイズの燻製を試作しました。これまでの乾塩法を主とした商品に比べ味や見た目などについて好評でした。(写真1)
  4. 料理実習の開催(檜原村)
     知名度の向上を目的に、料理店や旅館を対象に奥多摩やまめの鮮魚及び冷凍切り身、並びに通常ヤマメの鮮魚を材料とした料理実習を開催しました。味が好評であった他、冷凍切り身の商品化を望む意見が寄せられました。(写真2)

成果の活用と反映

これまでの2年魚以上(1kg以上)に特化した消費形態から、小型サイズ(1年魚200g)や中型サイズ(1年から2年魚500g前後)の利用、及び冷凍切り身・燻製品の導入による付加価値向上と商品アイテムの充実によって、奥多摩やまめの生産・流通体制を整備していきます。また、料理教室等のイベントを活用し、知名度の向上に努めていきます。

城 智聡


表1 奥多摩やまめ1年魚(約200g)とヤマメ通常魚の嗜好判定(2点嗜好試験法)

表1 奥多摩やまめ1年魚(約200g)とヤマメ通常魚の嗜好判定(2点嗜好試験法)


表2 奥多摩やまめ燻製の製作工程の一例

表2 奥多摩やまめ燻製の製作工程の一例


写真1 奥多摩やまめの燻製(3年魚、フィレー)

写真1 奥多摩やまめの燻製
(3年魚、フィレー)

写真2 奥多摩やまめ料理実習の開催(檜原村)

写真2 奥多摩やまめ料理実習の開催
(檜原村)