東京湾奥の浅場はアユのゆりかご
背景とねらい
アユはかつて多摩川を代表する魚でしたが、水質の悪化により東京湾からの稚アユ遡上が一時期途絶えました。その後、水質が改善され稚アユが再び遡上するようになりましたが、さらに安定的に遡上させることが期待されています。そこで、アユの増殖策を図るための基礎資料を得るために、東京湾に流下した仔魚の生育場を明らかにします。
成果の内容・特徴
- 東京湾奥の各所で稚魚用のトロール網を曳き、アユ仔稚魚の採集を試みました(図1、写真1, 写真2)。
- シラス期のアユは、湾に面する干潟の波打ち際に著しく多く、沖合では非常に少なく、運河沿いの波打ち際や直立した護岸の前面には分布しないことが分かりました(表1, 表2, 写真3)。
- 湾奥で採集したシラスアユと河川遡上期の稚アユの耳石解析から、ふ化の早い仔アユほど遡上が早く、遡上時の体長も大きく、遡上盛期の稚アユは10月下旬から12月中旬の早期ふ化仔アユであることが分かりました(図2, 写真4)。
成果の活用と反映
アユ資源の生育環境として、内湾干潟の浅場が重要であることが分かりました。これらを関係機関に周知し、内湾漁場整備などの指針に反映させていきます。(小泉正行)
- 仔魚:発育初期で脊椎骨数や鰭条数が成魚のそれに達していない段階
- 耳石:魚頭部の内耳にある石灰質の塊。アユでは1日1本の輪紋が形成される
![]() 図1 調査地点 |
![]() 図2 ふ化時期別に分けたアユの成長と遡上 |
![]() 写真1 アユ調査風景(お台場) |
![]() 写真2 アユ調査風景(羽田沖) |
![]() 写真3 ソリネット |
![]() 写真4 シラスアユ |
![]() 表1 平成16年度シラスアユの採捕密度(1000トン当りの個体数) |
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![]() 表2 平成17年度シラスアユの採集密度 (1000トン当りの個体数) |
![]() 写真5 アユの耳石 |
