研究の背景とねらい

近年、操業中に漁獲物や漁具がサメ類などの大型捕食生物によって横取りされる、いわゆる『食害』が多く発生しています(図1)。しかし、その被害状況や被害を及ぼしているサメ類の生態など不明な点が多く、具体的な対策が見つかっていません。そこで、伊豆諸島海域で発生しているサメ類による漁業被害の発生状況を把握するとともに、即応的な対策として、漁船による捕獲作業への支援と調査船による捕獲調査を実施しました。併せて、有効な防除対策を図るための基礎資料として、捕獲されたサメ類の生態的な特性の把握 に取り組みました。


図1 サメによる食害例 キンメダイ 図1 サメによる食害例 胃内容のハマトビウオ14尾
図1 サメによる食害例 左:キンメダイ 右:胃内容のハマトビウオ14尾

成果の内容と特徴

  1. 伊豆諸島海域でのサメ類の被害状況
    聞き取り調査により、被害発生率は底魚一本釣漁業で2%から20%、トビウオ類流刺網漁業で約5%前後と推定されました。この結果から伊豆諸島海域では、被害金額が年間6千万円から16千万円に及ぶことが明らかになりました。
  2. 漁業者・調査船によるサメ捕獲実績
    サメによる被害を軽減させるために、平成17年4月以降、伊豆・小笠原海域全体で漁業者による一斉捕獲や単独での捕獲が延べ202回(参加隻数716隻)実施され、合計457尾が捕獲されました(表1)。また、漁業調査船により捕獲支援調査を実施し、伊豆諸島北部海域では「やしお」が計23尾(一斉駆除協力含む)、伊豆諸島南部海域では「たくなん」が計49尾を捕獲しました(図2)。
  3. 八丈島周辺海域におけるサメ類の出現種と漁場との関係
    平成17年以降、八丈島周辺海域では、ネズミザメ目2科2種、メジロザメ目2科11種の計13種による漁業被害が確認されました(図3)。また、漁場別では、ハマトビウオ漁場で9種、アオダイ漁場で7種、キンメダイ漁場で4種、カツオ漁場ではクロトガリザメのみが確認され、漁場および操業形態により出現種が異なることが確認されました(図4)。

成果の活用と反映

今回得られた知見や漁業被害情報をもとに、従来の捕獲による軽減策のほか、生態的な特性を利用した軽減方策を検討するとともに、サメ類の水産資源としての有効活用を図っていきます。

堀井 善弘


表1 各島での年別サメ類捕獲数
表1 各島での年別サメ類捕獲数


図2 調査指導船「たくなん」によるサメ捕獲調査(1) 図2 調査指導船「たくなん」によるサメ捕獲調査(2)
図2 調査指導船「たくなん」によるサメ捕獲調査
図3 八丈島周辺海域で漁獲されたサメ類の出現種組成
図3 八丈島周辺海域で漁獲された
サメ類の出現種組成
図4 八丈島周辺海域の主要漁業種における種別出現頻度
図4 八丈島周辺海域の主要漁業種における
種別出現頻度