【背景・ねらい】

   東京都におけるキンメダイの漁獲量は増加傾向にあり、平成18 年以降、漁獲金額第1 位の魚種となっています。平成29 年には、八丈島におけるキンメダイの漁獲量は500 t と過去最高を記録しました。東京都の重要魚種であるキンメダイの資源を将来にわたり維持管理するため、島しょ農林水産総合センターではキンメダイの生態解明に努めています。

 

【成果の内容・特徴】

①  平成27 年11 月、漁業者によって尾叉長19 cm のキンメダイ幼魚が八丈島大根沖で漁獲されました。( 図1)。この情報をもとに、漁業調査指導船「たくなん」で試験操業を行った結果、計13回の操業で幼魚計155 尾を漁獲しました( 図2)。漁場深度は150‐440 m で、黒潮の外側域・内側域に関わらず周年漁獲されました( 表1)。
②  耳石を調べた結果、全ての個体の耳石縁辺部には透明帯が形成されていました。このことから、漁獲した幼魚は孵化後満1 年を経過しており、大半が1 歳魚と考えられました( 図3)。
③  胃内容物を調べた結果、アミ類や小型のイカ類が確認されました( 図4)。キンメダイ成魚の胃内容物からはエビ類やハダカイワシ等が見られますが、それよりも小型の生物を捕食していることが確認されました。
④  平成28 年5 月と平成30 年2 月に、幼魚計73 尾( 尾叉長16.5‐19.7 cm) に標識を装着し放流しました。平成30 年5 月現在までに再捕報告はありませんが、今後報告があればキンメダイの生態を解明する上で貴重な知見になることが期待されます。
 ※尾叉長25 cm 未満のキンメダイを幼魚とした。 

【成果の活用と反映】

   八丈島周辺海域におけるキンメダイ幼魚の知見を蓄積することで、伊豆諸島海域への資源加入機構の解明に繋がるとともに、東京都の漁業者が行う自主的資源管理や、国等と進めている「キンメダイ太平洋系群の資源評価」の基礎資料として活用され、キンメダイ資源の持続的利用に繋がることが期待されます。

(日野 晴彦)

 

 八丈島周辺海域におけるキンメダイ幼魚