【背景・ねらい】

   近年、伊豆諸島ではキンメダイ漁業への依存度が年々高まっていて、資源への漁獲圧軽減が喫緊の課題となっています。そこで、伊豆諸島北部海域の底釣りで漁獲され利用範囲が限定的な魚種について、流通状況や品質特性等を調査し、新たな漁業収益の柱になり得るか検討しました。

  

【成果の内容・特徴】

① 水揚量と魚価の把握(伊豆大島漁協と神津島漁協)
 平成22 年から29 年までの水揚げ伝票から、魚種別・年別の推移を調べました(図2)。アコウダイとアブラボウズは、平均価格が1,000 円/kg を超え高値で推移していました。特に伊豆大島漁協では、アコウダイが2,000 円/kg を超えていました。クロシビカマスは、岡田のみ1,000 円/kgを超えて推移し、地域的な特性が確認出来ました。ハチビキの平均価格は安いものの水揚げ量とと
もに増加傾向にあることが分かりました。また、神津島ではアブラボウズの魚体が大きいと極端に安くなる(特大は487 円/kg)ことが分かりました(図3)。
② 流通の把握(東京都漁連流通センター)
 平成28 年度の流通伝票から、取扱い業者数や販売量、価格について調べました(表1)。アコウダイやアブラボウズは、平均価格が高く取扱業者も比較的多いことが分かりました。出荷先の住所から、各魚種の出荷先都道府県割合を算出しました(図4)。各魚種とも関東近県への出荷が多いものの、アコウダイは特に宮城県への出荷が多いことが分かりました。
③ 鮮度低下の把握(K 値)
 各魚種のK 値を漁獲後から7 日間、1 日ごとに測定しました。刺身で食べることができる基準(K値=20%)を超えたのは、ハチビキが1 ~ 2 日後、アコウダイとアブラボウズが2 ~ 3 日後、クロシビカマスが3 ~ 4 日後でした(図5)。クロシビカマスは日持ちが良く、ハチビキは悪いことが分かりました。 

【成果の活用と反映】

   これらの成果を元に、今後は漁業収益性について検討するため、流通に着目し全国各地での魚価の違いや、流通時における魚種別の鮮度保持方法の開発に注力して研究を進めていきます。また、得られた情報については、随時、漁協や漁業者の皆様に提供していきます。

(諸岡 岬)

 

 キンメダイ資源の負担軽減に向けた取り組み