背景・ねらい

 ハマトビウオは伊豆諸島でかつて400万尾以上の漁獲を揚げていたが、1984年以後不漁となり、1986年から1998年にはほぼ10万尾以下と極めて低い水準に落ち込んだ。2000年には21万尾とやや増加したものの依然として不漁が続いている。東京都では資源回復のためTAC制度の導入を計っており、その基礎となる資源量推定に必要なハマトビウオの年齢を明らかにする。


成果の内容・特徴

  1. ハマトビウオでは、星状石にのみ微細な輪紋が多く認められた(図1、2、3)。
  2. 人工授精してふ化した仔魚を飼育し、ふ化後10日目から20日目、30日目、40日目、60日目の仔魚から星状石を摘出し、輪紋を計数した。
  3. 星状石はほぼふ化後10日目から15日目に形成され始めた(表1)。
  4. ふ化後20日目、30日目、40日目、60日目の平均輪紋数は表2のとおりで、星状石が形成されるまでの10日から15日を加えると、概ね1日1本輪紋が形成されると考えられる。
  5. 八丈島・外房・九州沿岸で漁獲されたハマトビウオ成魚の輪紋数は、走査型電子顕微鏡観察(16個体)で305本から470本、光学顕微鏡観察(21個体)で295本から386本であった。このことから、成魚の年齢を1歳と推定した。

成果の活用と反映

 これまで確認されていなかったハマトビウオの年齢が解明され、寿命を1歳として資源量の推定およびABCの算出が可能になり、平成13年1月から実施された年間の漁獲の最高限度数量目標を設定して資源管理する制度の導入に反映した。
(文責: 米山純夫)


図1 成魚の星状石(長径2mm)

図1 成魚の星状石(長径2mm)

図2 稚魚の星状石(ふ化後40日)

図2 稚魚の星状石(ふ化後40日)


図3 成魚星状石切片の走査電顕像

図3 成魚星状石切片の走査電顕像


表1 ハマトビウオ星状石の形成期

表2 ふ化後日数と論紋数の関係