小笠原海域でキンメダイ漁場の開発に取り組む
背景・ねらい
キンメダイは、伊豆諸島から小笠原に広く分布し産業上重要な魚種である。小笠原海域では小型個体が多く近縁種の混獲が多いことから、これまでほとんど漁獲対象種とされなかった。本試験では、小笠原海域におけるキンメダイの資源・生息状況を把握し、新たな水産資源としての可能性を調査した。
成果の内容・特徴
- 10月に水深600m前後の小笠原海台東海山で調査を行い、241尾のキンメダイを採集した。11月には、水深610mから630mの七島・硫黄島海嶺海形場周辺で調査を行い、94尾のキンメダイを採集した(表1、図1)。
- 漁獲されたキンメダイは、平均尾叉長36.3cm、平均体重1,033gで、最大個体は尾叉長48.0cm、体重2.4kgであった(表1、図2)。
- 尾叉長(x:cm)と体重(y:g)の関係式は以下の通りであった。
y=0.0281x2.9167 R2=0.9986 - 生殖腺の熟度計数(生殖腺重量(g)×104/尾叉長(cm)3)は、10月の調査では雄が0.4から1.7、雌が1.5から3.8、11月の調査では雄が0.4から3.8、雌が1.5から3.5といずれも低く、産卵期はすでに終了していた。
成果の活用と反映
今回の調査結果から小笠原海域においても、伊豆諸島と遜色のない大きさのキンメダイがまとまって漁獲される可能性が明らかになった。今後、調査を継続して未利用漁場の開発を行い、地元漁協への導入により、多角的な漁業経営を育成するとともに、資源管理に必要なデータの蓄積を図る。
(文責: 山本貴道)
表1 キンメダイ測定結果
図1 調査地点
図2 漁獲されたキンメダイの尾叉長 |
図3 漁獲されたキンメダイの尾叉長と体重の関係 |
写真1 小笠原海域で漁獲されたキンメダイ
