東京湾のマハゼの生息状況について
背景・ねらい
東京湾の東京都水域(都内湾)では、高度経済成長の昭和40年代に水質の悪化で魚貝類がほとんど姿を消した。しかし、その後の水質規制などにより水産生物も徐々に回復してきている。都民に最も親しみのあるマハゼについて仔稚魚の採集調査や産卵生息孔調査を実施し、資源の動向を把握する。
成果の内容・特徴
- 仔稚魚の発生状況については、毎月1回、大潮の前後に5ヵ所の定点で地引き網調査を実施した(図1、2)。
- 昭和63年から平成12年までの仔稚魚発生数の年変動をみると、平成5年がもっとも多く、また、寿命が1年である他の水産生物同様にほぼ1年毎に増減を繰り返していることが判った(図3)。分布の中心は羽田沖、15号地、三枚洲であった(表1)。
- 産卵期である冬場実施した釣獲調査では、雄の出現割合が少なく、特に1月下旬から3月には僅か10%台で、巣穴の生活に移ったことが伺える(表2)。
- 産卵生息孔数の経年変化をみると、平成6年から8年にはいずれの調査地点でも少なかったが、最近では回復してきている(表3)。
- 産卵生息の分布は羽田洲・お台場で多くみられた。これらの場所は、本来の底質(砂や泥)が残されている場所であった。
成果の活用と反映
仔稚魚の発生状況、生息場所の分布状況の調査を継続して実施することにより、都民に最も親しみのある東京湾のマハゼ資源に関する生物学的データを収集・蓄積し、東京湾と都民のふれあいに役立てる。
魚類調査(G1からG6)、生息孔調査(S1からS8)
図1 調査地点図
A袖網(ナイロン製、1インチ20メッシュ) |
写真1 マハゼの巣穴模式図 |
図3 マハゼ稚仔魚採集数の年変動
表1 マハゼ稚仔魚の平均採集数(尾)
表2 雌に対する雄の割合
表3 100m2当たりのマハゼ産卵生息孔数(個)の経年変化