背景・ねらい

IHNは、サケ・マス類における重要な疾病のひとつで、稚魚期に高い死亡率を示すが成長するにつれて発病しにくくなるという傾向であったが、最近では食用サイズや、親魚などの大型魚においても発生し、被害額が増加している(写真1)。しかし、現在まで有効な治療方法は確立されておらず、IHNウィルスへの強い抗病性を持つ系統の開発が急務となっており、平成元年より抗病系ニジマスの開発に取り組んでいる。

成果の内容・特徴

  1. 感染実験(写真2)には実際の被害状況を考慮して、大型魚の死亡率が高いウィルス株TK8901を用いた。
  2. 小さいときは死ななかったのに大きくなって死ぬという現象を防ぐため、実験は平均体重2gと8gの2つのサイズで計2回行った。
  3. 平成13年度の感染実験は平成元年から4代にわたって選抜を行った実験群の親魚から得られた11組の交配組を用いた。
  4. 感染実験での平均死亡率は、2gサイズで7.3%、8gサイズで12.1%で、選抜を行っていない通常魚(2g:85%、8g:97.5%)に比べ高い抗病性を示した(表1)。
  5. このうちN0103群では両サイズで死亡率0%と特に高い抗病性を示した。このN0130群の感染試験生残魚を次世代抗病系候補として選抜した(選抜群)。

成果の活用と反映

今回の感染実験群は選抜4代目からの稚魚であるにも関わらず、選抜群の死亡率0%、試験魚全体の平均死亡率も過去最低であった(図1)。また、過去4回の死亡率が徐々に低下していることから、選抜効果は上がっていると思われる。今後、更に抗病性を確実なものにするとともに、IHNに強いニジマスの持つ特異的な遺伝子についての解析研究し、抗病系品種の早期確立を目指す。

(文責:辻 博志)

IHN抗病系品種の開発に関する説明資料