背景・ねらい

 一都三県におけるキンメダイの漁獲量は1984年の約1万トンをピークに近年4千トンで推移し、資源減少が懸念されています。キンメダイ資源を回復し、持続的に利用していくには、資源の現状を把握し小型魚の放流や産卵親魚の保護、漁獲量の制限等の資源をへらさないための対策が必要である。本研究では伊豆諸島の三宅島の南西に位置するキンメダイ漁場の第2大野原海丘(図1)で、計量魚群探知機を用いた直接推定によるキンメダイの現存量把握の可能性を検討した。

成果の内容・特徴

  1. 魚群から反射される音波の強さを測定して、魚の現存量を直接推定することができる計量魚群探知機を用いて、三宅島南西の第2大野原海丘漁場でのキンメダイの現存量推定を試みた。
  2. 計量魚群探知機の調査海域で試験操業した結果、採捕した魚体の95%以上がキンメダイであったことから、計量魚探により記録された魚群のうち、海底付近から立上がる魚群のほとんどがキンメダイであると予想された。(図2,3)。
  3. 計量魚探により測定されたキンメダイの魚群内密度は海底より10m程度の深度帯で最大となり、1㎡あたり約2.5尾と試算できた(図4)。
  4. 空間分布構造を利用したクリギング(最適内挿法)により、調査海域内でのキンメダイの魚群分布を推定し、魚群分布から平均密度を求め、調査海域の面積を乗じて当該海域内のキンメダイを主体とした生物現存量を約5百トンと試算した(図5)。

成果の活用と反映

 資源量推定法はデルリー法やVPA等の漁獲統計情報を元にした間接推定法が主流である。本研究結果から、キンメダイ資源の現存量推定が漁獲情報に基づかない計量魚群探知機による直接推定法で可能であることが示唆された。計量魚群探知機による直接推定法は、漁業のない海域の漁獲制限のかけられている海域、期間、魚種等での現存量の推定が可能となり、資源評価の高度化が期待される。

(文責:妹尾 浩太朗)

 

キンメダイ魚群分布図