背景・ねらい

 伊豆諸島海域には、日本有数のキンメダイ漁場が形成されており、他県船との入会で操業が行われている。また、東京都漁業者においては、近年の底釣漁業の漁獲量不振から、キンメダイ漁業への依存度が高くなり、水揚量も増加傾向にある。そこで、キンメダイの資源管理の基礎資料とするために、卵および稚仔魚を対象とした調査を行い、キンメダイ資源の漁場への加入過程の一部を解明した。

成果の内容・特徴

  1. 調査指導船「みやこ」による表層プランクトンの採集の結果から、伊豆諸島海域で広くキンメダイ卵が確認された。(図1,写真1)
  2. 同一漁場(黒瀬海域)でも、キンメダイ卵の分布に偏りが確認された。
  3. 発生後期のキンメダイ卵は表層に多く分布することが確認された。
  4. キンメダイ卵の比重は小さく、前期仔魚は、発生が進むにつれて比重は増加することが明らかになった。(図2)
  5. 「キンメダイ卵は産卵された後、発生を進めながら表層にまで浮上してふ化する。また、前期仔魚はふ化後12時間経過すると推進200m以深まで、受動的に沈降する」という仮説を立てた。
  6. MTDネットによる多層同時層別プランクトン採集では、水深300m層で発生初期の卵が多く採集され、発生後期の卵は表層域での採集量が多くなる傾向があり、フィールド調査により卵の浮上過程について仮説を実証できた。(図4、写真2)

成果の活用と反映

 伊豆諸島海域におけるキンメダイの産卵が確認され、卵・仔魚の分布情報が飛躍的に蓄積された。今後さらに情報を蓄積することにより、卵の分布量からキンメダイの資源量の推定が可能となり、科学計量魚探による推定結果などを踏まえて、漁場単位での資源管理を実施することが可能となる。

(文責:堀井 善弘)

キンメダイ卵の水平・鉛直分布_説明資料