背景・ねらい

 現在の小笠原地域における甲殻類の水産利用は、イセエビ類やアサヒガニなどの比較的浅い海に生息する種類に限定されており、深い海に生息する甲殻類については、どのような種類が生息しているのかさえ知られていなかった。そこで小笠原群島周辺深海域における甲殻類の分布状況を把握し、新たな有用水産資源としての漁獲方法を開発した。

成果の内容・特徴

  1. 小笠原群島沿岸深海域から小笠原水産センター調査船「興洋」の深海カゴ調査によって、ボタンエビ類のマルゴシミノエビ、アカザエビ類のサガミアカザエビなど高級食材として利用される甲殻類の生息が確認された(写真1から写真3)。
  2. 小笠原群島沿岸深海域におけるカゴ漁具で漁獲される主要な甲殻類の垂直分布(図1)が明らかとなった。
  3. 漁具試験の結果、簡易なカゴ漁具(写真4)で有用な甲殻類が漁獲可能であることが明らかとなった。
  4. 使用漁具の標準化(図2)を行い、小笠原地域の実態に適合した漁具と操業方法を開発した。

成果の活用と反映

 小笠原群島周辺深海域において、これまでまったく知られていなかった水産資源として高級食材として利用される可能性のある有用な甲殻類の分布が明らかとなり、漁具の改良によって小笠原における新たな漁船漁業対象種としての活用が可能となった。

(文責:錦織 一臣)

深海甲殻類写真