背景・ねらい

 これまでの調査から同島の周辺海域では、大型のハマダイ等の底魚類が数多く生息していることが確認されています。また、同島は伊豆諸島海域から太平洋を東方へ流れる黒潮の一部が反流となって流れてくる海域にあたり、伊豆諸島海域で産出されたキンメダイの卵・稚仔魚が分散している可能性も考えられます。今回の調査では同島周辺海域について、試験操業による底魚類の採集とプランクトンネットによる稚仔魚の採集、海洋観測デ-タの収集を行い、伊豆諸島海域でのハマダイやキンメダイ資源の調査、研究に役立てます。

成果の内容・特徴

 平成20年7月18~22日に調査指導船「みやこ」(写真1)で鳥島地先で合計15回の底釣りによる試験操業を行い、鳥島から南鳥島までの海域で4測点(ST-1~4)と南鳥島を中心とした東西南北の海域で4測点(ST-5~8)の合計8測点でリングネット、ボンゴネット、ノルパックネットを用いた卵・稚仔魚採集と海洋観測を行いました(図1)。
① 試験操業による漁業資源の状況:ハマダイEtelis coruscans 29尾を含む合計18種101尾を採集しました    (写真2、図2)。ハマダイの平均尾叉長は約69cmであり、平成6年度及び8年度調査とほぼ同じ大きさであることがわかりました。また、操業1回あたりのハマダイ釣獲重量(CPUE)は約9kg台で、平成8年度と同程度であり、資源の状態が高いレベルであることが示唆されました。
② 魚類稚仔魚の分布状況:各種ネットから合計10目19科4,939個体の魚類が確認されました(写真3)。キンメダイの卵・稚仔魚については残念ながら採集されませんでした。これは、本年の伊豆諸島海域での出現状況が例年に比べて遅い傾向にあることから、調査時期の7月には黒潮の反流によって輸送されてくる卵・稚仔魚が少なかったためと考えられます。
③ 海洋観測結果:CTDを用いて水深別の水温、塩分、クロロフィルaを測定しました。海面付近の水温は全調査地点で概ね27~28℃で、底釣り試験操業でハマダイを釣獲した水深300~400m付近は13~14℃で、同時期の伊豆諸島海域と比べるとかなり高めであることがわかりました(図3)。

成果の活用と反映

 今後は、今回得られたデ-タを伊豆諸島海域と比較して漁場の特性を検討するとともに、定期的な調査を進め、伊豆諸島海域で資源の減少が懸念されているハマダイの生態解明や、キンメダイ資源の管理に役立てていきます。(小埜田 明)

調査指導船みやこ図2 底釣りで採集された魚類の割合

写真1 漁業調査指導船みやこ(136トン)     図2 底釣りで採集された魚類の割合

 

図1 調査海域

図1 調査海域

写真2 底釣りで採集された主な魚類

 

写真3 プランクトンネットで採集された仔稚魚

写真3 プランクトンネットで採集された仔稚魚

 

図3 水深別の水温比較

図3 水深別の水温比較
(三宅島、八丈島は7/16~17、南鳥島は7/21)