「テングサの島 三宅島」の復活を目指す
~海藻礁によるテングサ漁場の回復~

背景・ねらい

 三宅島では、平成12年に始まった雄山の大規模な噴火の影響によって多くのテングサ(オオブサ、マクサ)漁場が荒廃し、現在浅場のオオブサ漁場は回復傾向にあるものの(写真1)、深場に分布するマクサ漁場の多くは噴火以前の状態には回復していません(写真2)。三宅島はテングサ漁業への依存度が大きく、漁獲金額全体に占める割合が、噴火前年の平成11年には漁獲金額全体の約22%を占めていましたが、漁業が再開された平成17年は約13%と激減しています。そこで、衰退してしまった三宅島のテングサ漁場を再生するための技術開発に取り組みました

成果の内容・特徴

① マクサ胞子の着生率は粒子の堆積量が増大するほど低下し、また、その影響は粒子直径が小さい ほど著しいことがわかりました(図1)。
② 火山灰や土砂の堆積しにくい形状である柱状ブロックを備えた海藻礁を試作し平成18年11月に三宅島坪田沖(オオハシ)の水深約10mの海底に設置しました(写真3)。波のため岩から千切られて海中を漂うマクサを付着させ、付着したマクサを増殖させるために、柱状ブロックには化学繊維を巻いた棒状突起を取り付けました。
③ 設置から約2年経過した平成20年10月29日に海藻礁へのマクサ繁茂状況を調査したところ、海藻礁は対照ブロックや周辺の天然岩礁と比較して、1㎡あたりの着生量が多く、着生した全海藻中に占める割合も高いという結果が得られました(写真4、表1)

 成果の活用と反映

 今後は、海藻礁のさらなる経過観察や改良を行い、マクサ群落が長期間維持され、漁業を継続できるような技術の確立を目指します。    (滝尾 健二)

写真1 噴火後のオオブサ漁場

写真1 噴火後のオオブサ漁場

 

写真2 噴火後のマクサ漁場

写真2 噴火後のマクサ漁場

 

図1 堆積粒子量とマクサ胞子着生率の関係

図1 堆積粒子量とマクサ胞子着生率の関係

 

写真3 海底に設置した海藻礁

写真3 海底に設置した海藻礁(手前2礁)と
対照ブロック(奥)(2006.12.1)

 

写真4 マクサが繁茂した海藻礁

写真4 マクサが繁茂した海藻礁
柱状ブロック側面にマクサが繁茂している。(2008.10.29)

 

表1 三宅島オオハシにおけるマクサ着生状況調査結果(2008.10.29)

表1 三宅島オオハシにおけるマクサ着生状況調査結果