深海の魚類資源を開拓する
~三宅島近海における深海底釣調査~

背景・ねらい

 三宅島村役場では平成20年度の事業として、冬季の漁家収益の増加と鍋物材料等地産地消が可能な水産資源を確保するために、水深400~1000m程度の深海に生息するアブラボウズ、アラメヌケ、アコウダイ等の新漁場開発を行なっています。大島事業所ではこの事業に協力し、地元漁船に先行して調査指導船「やしお」による深海底釣調査を行ない、三宅島漁協及び漁業者に資料提供を行ないます。

成果の内容・特徴

① 試験操業
    従来、「やしお」が実施してきた三宅島近海の底釣調査結果からアブラボウズ等の漁場と思われる海域を想定し、アブラボウズ専用漁具とアブラボウズ・アコウダイ併用漁具をそれぞれ3組用い、餌には小イカの一尾掛け、又はイカ切身を使用して試験操業を行いました。(図1、2)。第1次調査では、6月24日に三宅島北東海域、6月25日には三宅島~御蔵島間海域で調査を行ない、アブラボウズ3尾を漁獲しました。第2次調査では、7月9日に御蔵島の北北東海域及び南東海域で調査を行ない、南東海域でアコウダイ8尾を漁獲しました。第3次調査では、7月24日に御蔵島北東及び南東海域、7月25日に御蔵島の南南東海域で調査を行ない、両日とも南東~南南東海域でアコウダイ計9尾他を漁獲しました(表1)。
② 漁獲物
    第1~3次の試験操業で漁獲された有用魚種は、アブラボウズ3尾、アコウダイ17尾、ユメカサゴ4尾、キンメダイ1尾でした。これら有用魚種は体長・体重を測定後、三宅島漁協により試験出荷を行ないました。(図3、4)。また、その他の魚種としては、バラムツ2尾、ソコダラ類12尾、サメ類5尾が混獲されました。
③ 調査結果の普及
    調査結果について、三宅島阿古港入港後、ただちに三宅島漁協に調査海域、漁獲結果を速報するとともに、後日報告書に取りまとめ、三宅島漁協及び三宅島村役場に提出しました。また、10月21日には三宅島漁協に漁業者や関係機関を集め、報告会を開きました。

成果の活用と反映

 三宅島村役場が計画している地元漁船による一斉調査に活用すると共に、今後も調査海域を増やして試験操業を行ない、地元漁船が主要魚種としているキンメダイが不漁時の代替え漁業として、活用出来ることを目指します。   (森下 浩司)

 

 

 

図1 調査海域

図1 調査海域

 

表1試験操業結果

図2 使用漁具

図2 使用漁具(アブラボウズ・アコウダイ併用)

 

写真1 調査風景

写真1 調査風景

 

写真2 アブラボウズ

写真2 6/25に漁獲されたアブラボウズ
上より全長:75cm、88cm、93cm
体重:7.9kg、12.4kg、17.5kg

写真3 アコウダイ

写真3 7/9に漁獲されたアコウダイ
全長:42~62cm
体重:1.2~4.3kg