八丈島におけるマクサの減少とその回復に向けた取り組み

背景・ねらい

 八丈島のテングサの水揚げは、昭和60年から平成2年にかけての多い年には600トン以上の水揚げがありました。しかし、平成8年以降、水揚げは激減し、平成16年以降は1トン以下と低迷しています(図1)。八丈事業所では、テングサ類の代表種であるマクサの生長と水温、栄養塩を中心とした環境因子のモニタリング調査を継続するとともに、今年度、新たにマクサの採苗技術の開発に取り組みました。

成果の内容・特徴

1.モニタリング調査を開始した平成17年以降、高水温・貧栄養の海況が継続し、マクサの生長は低水準で推移していました。しかし、平成20年(2008年)11月から平成21(2009年)年7月にかけて黒潮の流れが変化し、八丈島は約10年ぶりにテングサにとって好適な、水温が低く、栄養塩が多い冷水塊に継続して覆われ、マクサの生長に大幅な改善が認められました。(図2)。平成20年(2008年)と平成21年(2009年)の8月のマクサを比較してみると、平成21年のマクサは長さが2倍、1株あたりの重さが20倍となりました(写真1)。
2.マクサが生長するのに必要とする十分な光と栄養を与え、水温を変えて10日間の培養実験を行いました。その結果、マクサは水温が30℃を超えても十分に生長することが分かりました(図3)。近年の八丈島の水温は、夏場の高い時でも30℃を越えることはありません。そのため、テングサ減少の主要因は水温ではなく、貧栄養である可能性が示唆されました。
3.四分胞子嚢を形成したマクサから採苗を行い(写真2)、約6ヶ月間培養することにより、葉長7㎝の藻体を多数得ることに成功しました(写真3)。さらに、この培養マクサを成熟させ、培養2世代目の藻体を得ることもできました。

成果の活用と反映

今後は、マクサの生長と環境因子のモニタリング調査を継続するとともに、海況好転時に上記の採苗技術を生かし、マクサの回復を助長するための移植技術の開発にも取り組む予定です。

テングサ水揚げ量

マクサ1株当たり湿重量

マクサ成長の比較

水温別マクサの成長

マクサ4分胞子

培養したマクサ