伊豆諸島産キンメダイの脂の乗りを科学する

研究の背景・ねらい

 東京都では東京ブランド水産物として10魚種を選定しています。今回は、東京ブランド水産物のうちキンメダイについて、ブランド基準の提案、確立のための基礎データ収集を目的として脂肪含有量に着目し、その特性把握を行いました。

成果の内容・特徴

1.脂肪含有量の測定方法
 近赤外分光分析装置(写真1)を使って、非破壊かつ現場で迅速に脂肪含有量の測定が行えるように、検量線を作成しました。
2.脂肪含有量とサイズの関係
 魚体サイズ別の脂肪含有量の推移を図2に示しました。年間を通して、大型個体のほうが小型個体に比べて脂肪含有量が多い傾向があることがわかりました。しかし、いずれのサイズにおいても個体間の差が大きく、脂肪含有量の多寡をブランド基準の一つとして活用する場合には、近赤外分光分析装置を利用して水揚げ現場での測定が必要になると考えられます。
3.成分分析による地域差の検討
 伊豆大島産と神津島産のキンメダイについて、一般成分やアミノ酸組成などの分析試験を行いました。一般成分の組成では、伊豆大島産と神津島産のキンメダイに差は認められませんでした(図3)。またアミノ酸組成についても、甘み、旨み、苦みいずれの成分についてもその差は認められませんでした。
4.試食検査
 脂肪含有量と嗜好性の関係について、試食検査を行いました。異なる脂肪含有量のキンメダイを刺身で供したところ、脂肪含有量が多いほうが必ずしも好ましいという結果にはならないことがわかりました(表1)。しかし、脂は旨み成分をまとめてなめらかな食感を与える働きがあることから、脂が多い方が甘みや旨みをより味わいやすく、総合評価としても好ましいとの結果に繋がったと考えられます。

成果の活用と反映

伊豆諸島産キンメダイの食材特性として、漁連や各漁協等に情報提供を行います。また、鮮度保持技術と併せてブランド基準の提案を行います。             (滝口 香穂)

近赤外分光分析装置

脂肪含有量と近赤外推定値の関係

 

サイズ別脂肪含有量の推移

図2 サイズ別脂肪含有量の推移

 

成分分析結果

図3 成分分析結果

 

  

項 目

 

判定度数

甘み

旨み

脂の乗り

総合評価

                         *脂肪含有量 Aは5%  Bは10%