伊豆諸島産キンメダイの高品質化を目指して 東京ブランド「きんめだい」の魅力を高める
伊豆諸島産キンメダイの高品質化を目指して
東京ブランド「きんめだい」の魅力を高める
背景・ねらい
キンメダイは伊豆諸島で最も生産額が多い魚種であり(図1)、「東京ブランド水産物」にも選定されています(ブランド名:きんめだい)。しかし、生産現場においては、鮮度保持や安全・安心対策といった品質管理に対する取り組みが十分とは言えません。そこで、島しょ漁協におけるキンメダイの出荷の現況を科学的に評価・検証しその問題点の摘出と改善を図るための技術開発に取り組みました。
成果の内容・特徴
1 出荷の現況の評価
島しょ漁協より出荷されたキンメダイについて、2日後の鮮度(K値)と市場評価基準の一つである「体色」について調べた結果、鮮度にばらつきがあり、体色は市場評価の高い他県産キンメダイと比較して劣ることが解りました(図4)。
2 出荷形態の検証と改善対策
1)冷却用氷由来の真水の影響
キンメダイを異なる塩分(「海水100%」、「海水50%+真水50%」、「海水25%+真水75%」)の冷却水で保蔵し、2日後の体色と鮮度(K値)を比較した結果、真水の割合が多いと体色の劣化がおこることがわかりました(図5)。一方、2日後の鮮度には差が認められませんでした。
2)魚の取り扱いの影響
漁獲後に体表を擦られたキンメダイを冷却水で保蔵し、2日後の外観を観察したところ、体色が不均一となりました(図6)。擦ることにより色素細胞を含む粘液が剥離し、体色の劣化が起きたものと推察されました。
3)空中露出時間の影響
漁獲後に魚体を干出させた場合、速やかに冷却水に浸漬した場合と比較して短時間で体色が変化し(図7)、発色を早める効果が認められました。しかし一方で、死後硬直は短時間で進行した(図8)ことから、鮮度の低下が早まると考えられました。
3 保蔵方法改善効果の検証
漁獲後の魚の取り扱いに注意し、干出時間を短くし、真水の影響を取り除いた保蔵方法により、潤いのある黄金色のキンメダイに改善できました。
成果の活用と反映
鮮度保持対策を施したキンメダイの試験出荷をおこない、市場評価を得るとともに、ブランド確立に向けた取り組みを進めていきます。 (滝尾 健二)
図2 伊豆諸島におけるキンメダイ漁獲量の推移(昭和52~平成19年)
図4 2漁協における出荷2日後のキンメダイ
図4-2築地市場で高評価されているキンメダイの外観
海水100% 海水50%+真水50% 海水25%+真水75%
K値:4.6~7.8% K値:6.5~10.4% K値:5.5~9.3%
図5 塩分の異なる冷水で保蔵したキンメダイの2日後の体色とK値
図6 体表を擦った後冷水中で保蔵したキンメダイ(上)および擦らずに保蔵したキンメダイ(下)の2日後の外観
0分 10分 30分(完全硬直時)
0分 85分(完全硬直時) 27時間
図7 漁獲後に干出および水氷で保蔵したキンメダイの体色変化
(上:干出個体 下:水氷で保蔵した個体)
時間(分)
図8 漁獲後に干出および水氷で保蔵したキンメダイの硬直指数の推移
Y軸は硬直指数(%)