三宅島テングサ回復への取り組み 
噴火後9年経って

背景・ねらい

 テングサは噴火前まで三宅島で最も生産金額が多い漁業種でしたが、噴火によって大きな被害を受けました。当センターでは、噴火後、毎年のモニタリング調査によりテングサの回復状況を把握し、漁協への情報提供を行っています。あわせて、回復の遅れている漁場については、その原因究明と回復策に取り組んでいます。

成果の内容・特徴

1. 平成20~21年に三宅島沿岸域16地点でテングサの生育、分布状況調査を行いました。オオブサの着生状況は、例年同様、島北部の漁場で良好でした。マクサは、西側と東側でC級漁場が広範に分布し(前回、平成16~19年の調査では当該地域は全てD級)、地域によっては、着生量にある程度は改善が見られましたが、依然、水準は低い状態です(図1~4)。
マクサの回復が遅れているのは、噴火に由来する火山灰や砂泥が海底に堆積したり(図5)、サンゴモなどの雑藻が繁茂しているため、マクサの着生面が限られてしまうからだと考えられます。
2. マクサの着生面を増やすことで、漁場を回復させるために考案したコンクリート製海藻礁を設置しました。海藻礁は4か所が柱状に突出し、垂直面が多く、泥などが堆積しにくい構造をしており、また、突出部の先端には繊維を巻き付けた金属性の棒を取り付けました(図6)。
 コンクリート製の海藻礁は、周辺の着生面に比べてマクサの着生量が多く、特に、繊維を巻きつけた棒には、平成18年12月~21年9月の3年弱の期間に4.6㎏/㎡の着生がみられ、効果が確認されました。

成果の活用と反映

 噴火直後に三宅島周辺の海底を広く覆っていた火山噴出物は、大幅に減少しましたが、陸上からの流入と思われる海底の堆積粒子量はここ数年減少していないことから、マクサ漁場の自然の回復はまだ時間がかかるものと予想されます。センターでは、今後も漁業者が操業する目安となるよう、三宅島の漁場における最新のテングサ回復状況を把握し、情報提供するとともに、コンクリート製海藻礁の設置により、マクサ資源の回復に反映させます。

マクサ漁場評価オオブサ漁場評価

1 テングサ漁場評価(マクサ;        2 テングサ漁場評価(オオブサ;

平成2021年)                   平成2021年)

良好なマクサ群落良好なオオブサ群落

写真1 良好なマクサ群落            写真2 良好なオオブサ群落

土砂に覆われた海底

写真3 土砂に覆われた海底

海藻礁と突起部

写真4 テングサ海藻礁と突起部