【背景・ねらい】

 伊豆諸島におけるキンメダイ漁業への依存度が高くなる一方で、この伊豆諸島海域のキンメダイ資源は、東京都だけでなく他県に所属する漁船も同じ海域で操業しているため、各都県で共通した操業ルールに基づく資源管理を進めることが課題となっています。そのために、伊豆諸島海域のキンメダイ資源について、資源管理の単位となる系群構造や行動生態等を把握し、科学的な根拠で資源管理方策に反映させることが必要です。そこで、産地の異なるキンメダイの耳石中に含まれる微量元素を分析し、検出された元素濃度を比較検討することで、地域間の違いや行動などの生態的な情報について検討しました。

【成果の内容・特徴】 

  • キンメダイ耳石の微量元素分析:伊豆諸島海域(八丈島周辺・青ヶ島周辺)および沖ノ鳥島海域の3海域で漁業調査指導船による試験操業で漁獲されたキンメダイ計90個体(図1)から得られた耳石をPIXE(荷電粒子X線励起:Particle Induces X-ray Emission)分析を実施し(写真1)、合計29種類の微量元素が検出されました(図2)。
  • 海域間の微量元素組成の把握:検出された29元素のうち、検出割合の高いナトリウムNa、ケイ素Si、鉄Fe、亜鉛Zn、ストロンチウムSrの含有濃度は各海域で含有濃度が若干異なり、生息域での環境水の元素組成が異なることが示唆されました(図3)。
  • 微量元素と尾又長の関係:北太平洋におけるケイ素の鉛直分布はキンメダイの生息域に当たる水深500m付近で濃度が高くなることが知られています。分析結果から耳石中のケイ素濃度と尾又長に正の相関が確認され(図4)、キンメダイは成長に伴って深い場所に移動することが示唆されました。

【成果の活用と反映】

 今後、多くの産地でのキンメダイ耳石の微量元素を分析・比較検討を蓄積して、伊豆諸島海域のキンメダイの資源管理に必要な系群や行動など生態学的な情報を充実させ、資源管理方策に反映させていきます。                       

(堀井 善弘)

 

 元素からキンメダイを知る