多摩川の魚たちの現状は?(魚類の生息状況から見た多摩川の環境)
【背景・ねらい】
多摩川は、山梨県の笠取山を源とし奥多摩湖を経て、日原川、秋川などの支流を集め東京湾に注ぎます。流域は1都2県30市町村にまたがり、流域人口は約400万人を超えます。
高度経済成長期以降、河川改修や水質の悪化は生息する魚類や漁業に大きな影響を与えてきました。多摩川の水産資源の維持管理、魚のすみやすい河川環境の維持復元の基礎資料とするため、島しょセンターでは多摩川水系に調査地点(図1)を設定し、定期的に魚類生息状況の把握を行っています。調査は主に投網と電気ショッカーを使いました (写真1)。
【成果の内容・特徴】
- 日原川(図1-①):平成20年9月、平成23年11月の調査では、カジカやヤマメをはじめ6種が確認され、カジカは増加傾向が認められました。
- 多摩川上流域(図1-②):平成23~25年11月の調査では、ウグイ、タカハヤをはじめとする17種が確認され、上流域では、カジカや国内移入種であるタカハヤの増加が確認されています。
- 秋川(図1-③):平成22年11月、平成25年11月の調査では、オイカワ、カワムツをはじめ25種が確認されています。秋川は多摩川水系の中でも多くの魚種が確認され、カワムツなど7種の移入種が確認されています。
- 多摩川中流域(図1-④):平成25年9~12月の調査では、スゴモロコ、オイカワをはじめ20種が確認されています。国内移入種であるスゴモロコは中下流域を中心に近年、増加が確認されています。また、平成22年から実施している外来魚を対象とした調査では、特定外来生物であるコクチバスの増加が認められています。
【成果の活用と反映】
平成20年~25年に実施した調査では合計32種の魚類が確認されました(表1、写真2~5)。そのうち7種が国内からの移入種、3種が国外からの移入種(2種の特定外来種を含む)でした。本調査の出現魚種を汚濁が進んでいた昭和48~49年の同地域での調査結果と比較すると(図2)、汚濁に強いとされるモツゴやフナ類、タモロコ(写真4)などが減少し、弱いとされるカジカやカマツカ(写真3)などが増加していることから、多摩川水系での水質改善がうかがえます。また、遡上アユ(写真3)の遡上も増加していますが、堰などによる遡上阻害も認められ、特定外来種であるコクチバス(写真5)の増加といった問題も生じています。今後もモニタリングを継続し、調査を通じて蓄積された知見を、河川環境の保全や復元に活用していきます。 (橋本 浩)