【背景・ねらい】

 伊豆諸島の漁業にとって重要な魚種であるイサキの持続的な利用を目的として、島しょセンターでは、イサキ資源のモニタリング調査を実施しています。これによりイサキの資源状態を把握し、資源管理の基礎データとして活用していきています。

【成果の内容・特徴】

  • 漁獲量の年変動:イサキは、大島から三宅島までの伊豆諸島北部海域で、一本釣りや定置網漁業によって漁獲されています。1992~2012年までの漁獲量の推移を見ると、45tから200t前後と年によって大きな変動が認められました(図1)。このうち、大島では40t前後でほぼ横ばいに推移しています。大島では、魚類の漁獲量の約25%をイサキが占めており、漁船漁業の主要な魚種となっています。
  •  大島における魚体組成:イサキの盛漁期にあたる4~8月に、大島で水揚げされるイサキの魚体測定を行いました。尾叉長組成をみると、2009~2011年までは27~29cmが主体でしたが、2012年はやや小型化し25cm代が主体となりました。また、2013年は明らかなモードは見られませんでした(図2)。資源状態との関係は明らかではありませんが、今後の動向に注目していきます。

    【成果の内容・特徴】

      イサキは漁業対象種として伊豆諸島の代表的な魚種であるとともに、遊漁対象種としても人気があり、観光産業振興からも重要な資源とされています。今後も、持続的にイサキ資源を安定して利用できるように、引き続きモニタリング調査を継続し、関係機関や漁業者等と協力しながら、伊豆諸島海域におけるイサキの資源管理の推進に役立てます。                                            (瀧口 香穂)

    ※ 熟度指数(GSI)=生殖腺重量(g)÷体重(g)×100で求める。成熟度の指標となる。

     

      伊豆諸島北部海域におけるイサキのモニタリング調査                                                         

                         

  • 繁殖生態調査:魚体測定では、体長、体重のほかに生殖腺重量を測定し、熟度指数(GSI)を求めています。毎月の熟度指数の推移(図3)から、2013年は例年よりも産卵時期が早かったことが示唆されました。イサキは水温が20℃を超えると産卵が行われるとされています。2013年5月は黒潮の蛇行の影響により伊豆諸島北部海域に暖水が波及し、20℃の水温帯が大島周辺海域を定常的に覆っていた(図4)ことが、産卵に影響していると考えられます。