背景・ねらい

 アカハタは、小笠原海域の重要な漁獲対象魚の1つである。近年の活魚出荷の増加で本種資源の減少が懸念されている。このため、地元漁業者による資源管理の一環として、嫁島地区に禁漁区が設定された。また、当センターでもアカハタの種苗生産試験に取り組み、平成10年度には、全長50mmサイズで平均1,331尾/m3の稚魚が生産され、量産化に向けて大きく前進した。平成11年度は安定した種苗生産技術の確立をはかるとともに、生産された稚魚を禁漁区等に標識放流して効果判定調査を行った。


成果の内容・特徴

  1. 屋外水槽で飼育されているアカハタ親魚は、一年を通して産卵することが分かった。平成12年度は5月から11月の期間に16,732千粒の受精卵を採卵することができた。浮上卵率は49.9%であった。
  2. 平成11年10月から11月に採卵された受精卵を用い種苗生産を行った結果、全長50㎜サイズの稚魚平均2,000尾/m3の生産をあげることができ、前年の成績を約50%上回った。
  3. 平成11年3月から6月に嫁島禁漁区に5,334尾、11月に父島宮之浜に536尾を標識放流した。放流後の宮之浜における潜水調査では多数の生産魚が確認・再捕され、標識魚の回収率は5%を越えた。嫁島禁漁区における釣獲試験では、標識魚は再捕されなかった。

成果の活用面・留意点

 平成10年度から2年連続して本種の種苗量産に成功し、平成11年度は平均単位生産尾数(1m3あたりの生産尾数)が2,000尾となった。この結果はハタ類の種苗生産では世界最高水準であり、今後の本種の栽培漁業発展に向けて大いに期待がもてる。また放流効果試験では2回の釣獲調査で標識魚の回収率が5%を越え、放流サイズ、放流場所の選定によって高い放流効果があると考えられる。


図1 種苗生産されたアカハタ仔魚(全長4.5mm)

図1 種苗生産された
アカハタ仔魚(全長4.5mm)

図2 種苗生産されたアカハタ稚魚(全長70mm)

図2 種苗生産された
アカハタ稚魚(全長70mm)


放流年月日 放流場所 水深(m) 放流数(尾) 平均全長(mm) 平均体重(g)
1999.3.29 嫁島東の湾内 10から15 846 161 60.7
嫁島西の湾内
1999.6.8 嫁島東の湾内 10から15 1388 139 36.9
嫁島南
1999.6.29 嫁島西の湾内 10から15 3100 129 31.9
1999.11.10 父島宮の浜湾内 5から7 536 157 66.5

表1 平成11年度の放流


図3 父島宮の浜での釣獲調査

図3 父島宮の浜での釣獲調査

図4 回収された標識魚(右)と天然魚(左)

図4 回収された標識魚(右)と天然魚(左)