背景・ねらい

 東京都における人工生産フクトコブシ種苗の放流事業は、栽培漁業センターの稼働とともに平成5年度から本格的に始まった。八丈島では、毎年約50万個の種苗が島の4地先に放流されている。水産試験場では、放流開始の翌年の平成6年から地元漁協等の協力を得て、放流貝の漁獲物調査を毎年実施している(写真1)。今回は、平成8年放流した種苗について、平成9年から11年の3年間実施した調査結果を取りまとめ、八丈島での人工生産放流フクトコブシの地先別成長と漁獲回収率について取りまとめた。


写真1

写真1

成果の内容・特徴

  1. 放流した4地先の平均成長量は、放流1年後に殻長53.8mm、重量18.4g、2年後65.6mm、35.7g、3年後73.8mm、58.5gであった。
  2. 地先別の成長量を比較すると、殻長成長量では放流1年後の成長が最も良かった地先は末吉で57.5mm、最低は三根の50.0mmで地先間の差がみられたが、3年後の漁獲物はいずれ地先でも平均殻長75mm以上に成長していた(図1)。
  3. 放流1年後の重量成長が最も良かった地先は中之郷で平均重量20.1g、最低は三根の14.9gであった。3年後の漁獲物で比較すると、中之郷が最も良くて64.5g、最低は大賀郷の52.8gであった(図2)。
  4. 平成8年50万個の種苗を放流し、1年目に45,872個、814.3kg、2年目に18,029個、617.3kg、3年目に1,163個、68.7kgを回収した。3年間の累積回収率は13.0%、漁獲回収重量1,500.3kgであった。
  5. 地先別回収率で最も良かったのは中之郷で3年間に43.0%を回収したが、他の3地先は大賀郷3.6%、末吉5.9%、三根9.1%で何れも10%以下であった(図2)。
  6. 放流貝は、3年間の漁獲回収個体のうちの約70%が1年目に回収された。

成果の活用と反映

 種苗放流事業における放流貝漁獲物調査等のモニタリング調査は、事業の効果を評価する上で必要である。今回の調査結果は、八丈島でのフクトコブシ種苗放流事業における放流適地、放流数量等を検討ための参考資料とする。


図1 八丈島の4地先

図1 八丈島の4地先

図2 放流種苗の殻長成長

図2 放流種苗の殻長成長

図3 放流種苗の重量成長

図3 放流種苗の重量成長


図4 放流地先別放流後3年間の累積回収率

図4 放流地先別放流後3年間の累積回収率