伊豆諸島南部海域におけるキンメダイの卵・仔魚の分布と分散
背景・ねらい
キンメダイは、伊豆諸島海域に広く分布する底魚類で、他県との入会で操業が行われている。一都三県(東京・千葉・神奈川・静岡)では、資源管理計画を定め資源の保護に取り組んでいるが、当海域におけるキンメダイの卵稚仔の分布や分散などの初期生態に関する研究例が少ないことから、産卵親魚の保護に関しては十分な管理方策がとられていない。そこで、主要漁場の一つである伊豆諸島黒瀬海域において、卵稚仔調査を実施しキンメダイの卵稚仔の分布と分散過程及び産卵場所に関する知見を収集した。
成果の内容・特徴
- 表層曳きリングネットで1定点最大104個、9定点合計179個体、垂直曳きLNPネットで1定点最大24個、9定点合計44個採集した。(表1、表2、図2)
- 発生段階別に見ると、垂直曳き採集では発生初期の胚胎形成以前(A期)のものが多く採集され、表層曳き採集ではそれ以降の卵(B期からC期)が多くを占めた。また、表層曳きで前期仔魚を1固体収集した。
- 黒瀬海山東側の測点では、発生段階初期の卵を多く採集し、併せて魚群探知機によるキンメダイの反応が確認されたことから、この地点で産卵が行われていたと考えられる。
- 発生段階別の卵分布から、受精卵は表層まで浮上しながら発生が進み、孵化後、前期仔魚期まで表層に分布することが示唆された。
成果の活用と反映
伊豆諸島海域で操業するキンメダイ一本釣り業者は、平成11年から産卵期である8月の間に16日間の操業の自主規制に取り組んでいる。今回の調査により卵から前期仔魚までの初期生態の一部が明らかになり、同海域での産卵行動の事実を略確認した。今回の結果を関係漁業者の資源管理の取り組みに反映させ、実効性のある資源管理の推進に役立てていく。
*大島分場
図1 調査測点(●)と海底地形図
図2-1 キンメダイ卵(A期卵) |
図2-2 キンメダイ卵(B期卵からC期卵) |
図2-3 キンメダイ前期仔魚 |
表1 改良型ノルパックネット |
表2 表層曳きによるキンメダイ採集卵および仔魚数
