背景・ねらい

 伊豆諸島海域では、我が国でも有数のキンメダイ漁場が分布し、東京都の漁船を始め、多くの他県漁船が操業している。近年、キンメダイの漁獲量(図1)は、1985年にピークを示した後、年々減少している。そのため資源の枯渇が心配され、資源管理への取り組みが求められている。
 効果的な資源管理を行うには、資源の状態を科学的に評価する必要がある。そのためには、資源量の動向を明らかにしなくてはならない。本研究では、1都3県の漁獲量の6割以上を占めている底建て延縄漁業の漁獲物の年齢組成と成長を明らかにし、資源量推定に必要な情報を収集した。


図1 一都三県キンメダイ漁獲量の推移

図1 一都三県キンメダイ漁獲量の推移: 1984年をピークに年々漁獲量は減少している。これが単に漁船の減船によるものなのか、魚の量自体が減ったものなのかを調べる。


成果の内容・特徴

  1. 底建て延縄漁業で漁獲されるキンメダイは、7種類の銘柄に分けられて水揚げされている。そこで、図2に示した耳石を用いて年齢を調べた結果、3歳から16歳までの魚が漁獲されることがわかった。
  2. 漁獲物の年齢組成を見ると、4歳魚から7歳魚が全体の約8割を占めていた。
  3. 年齢と尾叉長、年齢と体重の関係を求めた(図4)。漁獲開始年齢である3歳魚の大きさは、尾叉長273mm、体重450gであった。
  4. 尾叉長は、6歳魚までは、1年間に約30mm以上の成長を示すが、その後、低下し、8歳魚以上では20mm以下となっている。
  5. 重量は、5歳魚で1kgに達し、9歳魚で2kgを越えた。また、8歳魚までは年間250g以上の成長を示し、その後も大きな成長の低下はなく、年間200g以上増加している。

成果の活用と反映

 底建て延縄漁場は、産卵に加わる4歳魚以上の個体が多く生育し、重要な産卵親魚漁場と考えられる。その資源量等を求めて資源状態を診断し、漁業者が取り組む資源管理型漁場の実践に科学的裏付けデータを提供することにより、自主的資源管理の前進が期待できる。


図2 年齢を耳石で読む

図2 年齢を耳石で読む: 内耳中の耳石を用いて年齢を調べた。この耳石には木の年輪と同じように輪が形成されることが知られている。


図3 各銘柄に含まれる年齢の割合

図3 水揚げされた各銘柄に含まれる年齢組成全体の約8割を4歳魚から7歳魚が占めていた。


図4 成長曲線(年齢と尾叉長・体重の関係)

図4 成長曲線(年齢と尾叉長・体重の関係)