伊豆諸島におけるサザエの産卵について
背景・ねらい
サザエは、年間 200トン、2億円以上を水揚げし、テングサ、イセエビとともに伊豆諸島の重要な磯根資源である。東京都では、漁業調整規則により漁獲の禁止期間と大きさの制限を定め、サザエ資源の保護と育成を図っている。本研究では、現行の規則で定められている産卵期保護のための7月から8月の禁止期間と小型貝保護のための殻高50mm以下の漁獲制限が、サザエ資源管理を行なう上で適切であるかどうか検証した。
成果の内容・特徴
- サザエの成熟は 4月ごろから始まり、6月下旬から7月上旬に生殖腺熟度指数(G1)のピ-クがみられ、その後、10月から12月にかけて減少した(図1)。一方、組織標本の観察では、いずれの年も10月の時点で産卵後の様相を呈していた(図2)。従って、伊豆大島におけるサザエの産卵期は、7月から9月と推定された。
- 殻高とG1の関係(図3)から、雌雄ともに成熟最小型は殻高50mm前後と推定された。一方、殻高の頻度分布(図4)は5群に分離されたが、1齢貝は採集されてないことから、最小個体群の第1年級群は2齢貝と考えられる。
- 年級群組成(図4)から、殻高50mmを越えるのは第2年級群、つまり3齢貝からであり、伊豆大島のサザエは生後3年目から産卵に加わることがわかった。
図1 伊豆大島におけるサザエ成貝の生殖腺熟度指数(G1)の季節変化
図2-1 産卵前(7月)のサザエの生殖腺組織像 |
図2-2 産卵後(10月)のサザエの生殖腺組織像 |
図3 サザエの殻高と |
図4 天然サザエの年級群組成 |
成果の活用と反映
漁業調整規則で定められている漁獲禁止期間の7月から8月は、概ね妥当であると考えられる。しかし、大きさの漁獲制限である殻高50mmについては、成熟最小型とは一致するが、成長の良好な一部の2齢貝は産卵を経験せずに漁獲される可能性があり、資源管理上問題である。従って、現在の殻高50mm以下の漁獲制限を70mmから80mm位までに引き上げる必要がある。制限殻高の引き上げは、図5に示した体重の変化からも判るように、漁獲量の増加も期待できる。
* 現奥多摩分場
図5 伊豆大島におけるサザエの成長