背景・ねらい

 養殖排水に溶け込んでいる窒素、リン等の汚濁物質は、多量の水に低濃度で含まれる性質を持っている。そのため、従来の機械的な浄化方法では、施設設置や運用に多大なコストが必要となり、民間養殖場への技術導入の大きな障害となっている。そこで、養殖排水を利用して植物を栽培することにより、汚濁物質を除去するとともに、副産物を生産することによって養殖業者の利益を図る可能性を検討した(図1)。


図1 試験設定図

図1 試験設定図

 

成果の内容・特徴

  1. 野菜類ではミツバ87株、チンゲンサイ34株を収穫した(図2)。コマツナは双葉の時点で虫による食害のため、試験を中止した。
  2. 花類ではキショウブ、エンゼルス・トランペット(トランペット)、ニューギニア・インパチェンス(インパチェンス)の3種ともに生育、開花した(図3)。
  3. 各栽培種における汚濁物質の除去能力は、水質浄化能力の高いホテイアオイと比較して、全窒素(T-N)ではインパチェンスが約1.7倍、全リン(T-P)ではキショウブが約1.9倍の除去能力を持つことが判明した(図4、5)。
  4. 野菜、花類ともに土壌栽培と比較して成長が遅かった。

成果の活用と反映

 養殖場における1日あたりのT-N、T-Pの排出量は、それぞれkg単位に及ぶほど多量である。この全量を植物栽培によって除去するには、大規模な栽培面積が必要となる。従って、植物栽培は他の除去方策との併用によって、汚濁物質を除去しながら自家消費的な野菜類の生産や花類による養魚場、釣り堀の景観美化等の副次的利益を得る活用方法が有効であると考えた。


*1現八丈分場、*2現小笠原水産センター


図2-1 収穫したミツバ

図2-1 収穫したミツバ

図2-2 収穫したチンゲンサイ

図2-2 収穫したチンゲンサイ


図3 開花したキショウブ

図3 開花したキショウブ


図4 T-N除去量

図5 T-P除去量