背景・ねらい

 イサキは、タカベと同様に伊豆諸島の大島から神津島の島回りに棲息する重要な水産資源である。平成の初めごろは約200トン、2億円から3億円の水揚げをしていたが、最近は、100トンを割り、水揚げ金額も1億円以下になってきており(図1)、資源回復のための適切な資源管理が必要になってきている。本研究においては、伊豆諸島でまだ明らかになっていない産卵や初期発生に関する知見を陸上水槽内での自然産卵により収集し、天然海域での資源調査に役立てることを目的とて実施した。

図1 東京都におけるイサキの漁獲量

図1 東京都におけるイサキの漁獲量

成果の内容・特徴

  1. 産卵は、水温が20℃を越えた6月上旬頃から始まり8月中旬まで続き、ピークは6月下旬で、最高1日当たり120万粒の産卵を確認した(図2)。また、産卵時刻は、午後9時から10時にかけて集中していた(図3)。
  2. 卵は直径0.85mmの分離浮性卵で、水温22.0℃の飼育条件下で24時間でふ化、4日目で開口、発眼し餌を食べる。20日目には各鰭が発達し中層を泳ぐようになる(図4)。
  3. ふ化仔魚の大きさは尾叉長1.7mmで、1日後2.8mm、5日後3.3mm、20日後6mmになり、その後直線的な成長を示して113日目には10mmを越えた(図5)。

 

図2 産卵時期と産卵数

図2 産卵時期と産卵数

図3 産卵時刻

図3 産卵時刻

図4 初期発生

図4 初期発生

図5 人工生産種苗の成長

図5 人工生産種苗の成長

成果の活用と反映

 産卵期の保護や小型魚の保護等の資源管理を行なうには、対象種に関する産卵生態や成長等に関する基礎的な知見の収集が不可欠である。今回は、人工飼育管理下においてそれらの知見を得、今後、天然海域での調査における採集卵・仔稚魚の査定等への活用を行なっていく。