令和元年度 主要成果集(水産)

令和元年度 主要成果集(水産)

キンメダイの資源管理方策を検討するため、管理措置の効果予測シミュレーションモデルを試作しました。種々の試行を行った結果、制限体長の引き上げによる若齢魚の保護と、禁漁期拡張の複合措置が、有効な管理方策の1つと判断されました。

八丈島東 13 マイル漁場で、漁業調査指導船による計量魚探調査を行った結果、調査区画内におけるキンメダイの魚群量は 31~51 トンと推定されました。

近年、伊豆諸島北部海域の漁業がキンメダイ漁業に集中していることから、キンメダイ以外の魚の利用促進や収益増加をすることにより、漁業資源の分散利用を促進することを目標としました。候補魚の選定、漁獲調査、出荷調査などを行った後、アブラボウズ、クロシビカマス、ハチビキの3魚種に絞りこみ、具体的な付加価値向上の取り組みを行い、各魚種の利用促進の実現にむけて取り組みました。

人工投石漁場におけるイセエビの行動について、ピンガーを活用した追跡調査を実施しました。その結果、日中は岩陰に隠れて夜間に動き回る様子など、昼夜連続でイセエビの行動を長いもので 9 日間にわたり観察することができました。

八丈島周辺におけるクサヤモロ漁業に影響する要因を明らかにするため、漁獲量・魚体測定データを解析しました。その結果、漁獲量は季節的に変化し、8~11月に増加、11~12月に減少しました。また、黒潮流路がC型に移行すると漁獲量が増加することが示されました。その要因として、クサヤモロの成長と年齢組成の変化の影響が考えられました。

小笠原諸島の重要な漁業対象種であるアカハタについて、成長、成熟、寿命などの漁業生物学的知見と水揚げデータを用いて、近年の漁獲利用状況を明らかにしました。この結果、本種は現在の漁獲圧では乱獲の兆候は認められず、持続可能な漁業が営まれていることがわかりました。

細菌性冷水病(以下、冷水病)はアユに非常に大きな被害をもたらす疾病であり、当センターでは天然河川や養魚場における蔓延防止に努めています。今回、冷水病菌を迅速に検出し、同時に遺伝子型の判別が可能な手法を開発しました。

近年、多くの「江戸前アユ」が多摩川を遡上するようになり、中流域の堰下などで滞留するアユも認められています。そのアユを有効に活用するため、中流域で採捕して上流に汲み上げる取り組みが行われています。今回、汲み上げアユの脂鰭を切除し、上流での生息状況、成長および産卵への関与を調査しました。これにより、上流部に汲み上げたアユが漁獲対象サイズまで成長することを確認し、産卵にも関与していることが推測できました。これらの結果から、汲み上げ放流が中流域に滞留したアユの有効活用に効果があることがあらためて確認されました。

かつて汚濁が著しかった都内河川は、近年の下水道の普及に伴う水質の好転により、東京湾奥のハゼの生息環境も改善されたものと期待されました。しかし、実際にはも「江戸前のはぜ」は漁獲統計上は13年間漁獲がない状態が続いています。湾奥に生息するマハゼの現状をモニタリング調査結果から考察すると、夏季に海底に幅広い貧酸素水塊が出現してマハゼの生息環境が悪化したことが減少の一因と考えられました。

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