メカジキの産卵場所を探る (メカジキの持続的利用を目指して)
【背景・ねらい】
メカジキの「たて縄漁業」は、小笠原における最も重要な漁業で、平成19年度の漁獲金額は3億6千万円と総漁獲金額の6割を占めました。しかし、平成21年度以降は漁況も悪く、その漁獲量もこれまでと比較して減少しています。そこで小笠原水産センターでは、本種の持続的利用を目指し初期生態や回遊経路の解明に向けて様々な調査に取り組んでいます。これまで、生殖腺重量の変化を調査した結果、6月に成熟した個体が多く観察されましたが、産卵の有無や産卵場所の特定には至っていませんでした。そこで、メカジキの産卵場所を把握するため、マルチネットによる本種の卵稚仔の採集を試みました。。
【成果の内容・特徴】
平成21年、22年の5月~7月に小笠原諸島周辺海域のメカジキ漁場において、漁業調査指導船「興洋」でマルチネットを用いて卵稚仔の採集を行いました(写真1,2)
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2年間で計42回のマルチネットによる表層曳きを行った結果、平成22年6月23日の調査時に、北緯26°58′東経141°58′の表層において全長約20mmのメカジキ稚魚を1個体採集しました(図1,写真3)
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平成21年7月17日の調査時に、北緯26°55′東経142°05′および北緯27°20′東経142°05′の表層において全長5.0mmと7.6mmのマカジキ科の稚魚を採集しました(図1,写真4,5)
メカジキの稚魚は、約4mmでふ化し、1ヶ月後には12cm程度にまで生長すると報告されています。今回採集された稚魚は約20mmであることから、ふ化後15日程度と考えられ、メカジキが小笠原諸島周辺海域を産卵場所にしていることが推定されました。また、マカジキ科の稚魚も採集されたことから、小笠原諸島はメカジキだけではなくカジキ類にとって重要な産卵場所であることがわかりました。
【成果の活用と反映】
今後は、メカジキ卵稚仔調査を継続して行い、その水平分布とさらに詳しい初期生態を明らかにし、持続的利用に向けた管理方策の基礎資料とします。
(田中優平・山口邦久)
写真1 漁業調査指導船「興洋」 写真2 ネット調査風景
図1 小笠原海域におけるカジキ類の稚魚採集地点 写真3 メカジキ稚魚(TL: ca 20mm)
注:○はマカジキ科稚魚、●はメカジキ稚魚採集地点
写真4 マカジキ科の稚魚(TL: 5.0mm) 写真5 マカジキ科の稚魚(TL: 7.6mm)