【背景・ねらい】

 東京都におけるキンメダイの漁獲量は近年増加傾向にあり、平成18年以降漁獲金額第1位の魚種となっています。八丈島においても、キンメダイはカツオと並ぶ最重要魚種となっています。そのため東京都の重要魚種であるキンメダイの資源を将来にわたり維持管理することを目標に、島しょセンターでは、海域ごとの漁獲情報および漁場別魚体組成の解析を行い、資源動向の把握に努めています。

【成果の内容・特徴】

  1. 平成22年10月3日に尾叉長9cmの背鰭軟条が伸びたキンメダイ幼魚(通称「糸ひきキンメ」)が、八丈島北側の富士下漁場(水深600m)で漁獲されたキンメダイの口の中から発見されました(図1,2)。糸ひきキンメは、沿岸域や伊豆諸島北部海域ではみられますが、今まで八丈島周辺では採集報告がなく、今回が初記録となりました。また、着底したと思われるキンメダイとしては、日本周辺海域において最小記録となりました。キンメダイの着底生態について不明な点が多く、今回の採集は不明なキンメダイの生活史を知る上で貴重な情報となりました(図3)。
  2. 水揚調査の結果、伊豆諸島および八丈島のキンメダイ漁獲量は増加傾向、八丈島におけるCPUE(1日1隻当たりの漁獲量)は横ばい傾向で推移しています(図4)。
  3. 魚体測定の結果から、八丈島周辺の漁場では平成12年以降大きな加入が確認できず、漁獲魚体の大型化が見られていますが、平成21,22年には小型魚の加入が確認されました(図5)。
  4. 耳石による年齢査定の結果から、平成21年の漁獲物は10歳魚主体、8~10歳で全体の6割以上を占める高齢魚主体の組成になっていました。

【成果の活用と反映】

 東京都漁業者が行う自主的資源管理の基礎資料として、また、広域連携により国や関係都県が進めている太平洋南部キンメダイ資源回復計画の管理方策策定の基礎資料として活用されます。

(橋本 浩)

図1

図1 八丈島近海で採集されたキンメダイ幼魚

 

図2

図2 キンメダイ Beryx splendens Lowe

     

図3

図3 キンメダイのライフサイクル  
      

図4

図4 伊豆諸島におけるキンメダイ漁獲量の推移


図5 

  図5 八丈島周辺で漁獲されたキンメダイ尾叉長組成の推移