計量魚群探知機でキンメダイの現存量を推定する
【背景・ねらい】
資源の直接推定法の1つとして、計量魚群探知機による調査が注目されています。しかし、深海に生息するキンメダイでは、魚群と海底との識別や魚種判別等、解析を行う上で技術的な問題点も多いのが現状です。今回の解析では、これらの点を改善して、精度の向上を図り、三宅島南西海域に位置する第2大野原海丘のキンメダイの現存量の推定を試みました。
【成果の内容・特徴】
現存量推定は、平成22年1月、(独)水産工学研究所にデータを持ち込み、同研究室の協力を得て、専用のソフトウエアにより行いました。データは、平成20年12月8日の夜間、第2大野原海丘で漁業調査指導船「みやこ」(図1)が収集したものです。パラメータのTS値(1尾あたりの反射強度)は、平成17年に実際のキンメダイを使った水槽実験から求めた実測値(平均TS:-36.461)を用いました。
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計量魚探調査と釣りによる試験操業
平成20年12月8日18:00~9日02:00、第2大野原海丘(水深220から290m付近)(図2)において、「みやこ」に搭載する計量魚群探知機(KFC-3000、周波数38khz)で音響データを収集しながら、合計13回の試験操業を行い、キンメダイ420尾(平均尾叉長303.4mm、体重629.9g)(図3)を釣獲しました。キンメダイが釣獲魚の97%を占めたことから、エコーグラムの反応は全てキンメダイとしました。
- 現存量解析
「みやこ」で収集した生データを、専用のソフトウエアEcho view ver.4.0で読み込み(図4)、魚群と海底を手作業で分離の後、泡かみや雑音による干渉域を除去しました。ESUD(単位積分区間)を0.1nmと0.05nmに設定し、GPSの航跡記録から、比較的分布が密になっている海域を選定し、区間ごとのSA値(面積後方散乱強度)を求め、Krigingの手法を用いて現存量を推定しました。結果は、ESUD(単位積分区間)が0.1nmのとき、1,084トン、0.05nmのとき1,024トンとなりました(表1)。
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SAマップの作成
海底地形図作成ソフト(Suerfer8)を用いて、海底地形図と魚群の分布密度を作成したところ、調査時のキンメダイ魚群は、海丘の谷の斜面を中心に形成されていることがわかりました(図5)。
【成果の活用と反映】
これまでの調査から、調査海域のキンメダイの現存量は500から1,000トンと推定されますが、さらに精度を高めるためには、調査回数を増やし、モニタリングを続けていくことが必要と思われます。
(小埜田明)
図1 漁業調査指導船「みやこ」136トン
図2 調査海域
図3 釣獲魚の尾叉長組成
図4 解析中のエコーグラム
図5 SAマップ
表1 現存量推定結果
ESDU(nm) |
平均Sa |
面積(nm2) |
尾数 |
トン数 |
0.1 |
3.84E-04 |
1105608.97 |
1,881,524 |
1,084 |
0.05 |
3.64E-04 |
1105608.97 |
1,781,291 |
1,026 |