【背景・ねらい】

 伊豆諸島産ケンサキイカは通称「赤いか」と呼ばれ、甘みのある肉質は内地の市場でも定評があります。しかし、流通面から島外への活イカ輸送は難しく、出荷形態は、発泡スチロール箱内に敷き詰めた砕氷の上にイカを並べる方法(下氷:図1)が一般的です。一方、近年、他産地ではイカを生きた状態で宅配できる技術が普及し、一般家庭でも活イカ特有の透明感(図2)や歯応えを味わうことが可能になっています。そこで、活イカに近い外観・食感を長時間保持できるよう新たな鮮度保持手法の開発に取り組みました

【成果の内容・特徴】

 現存量推定は、平成22年1月、(独)水産工学研究所にデータを持ち込み、同研究室の協力を得て、専用のソフトウエアにより行いました。データは、平成20年12月8日の夜間、第2大野原海丘で漁業調査指導船「みやこ」(図1)が収集したものです。パラメータのTS値(1尾あたりの反射強度)は、平成17年に実際のキンメダイを使った水槽実験から求めた実測値(平均TS:-36.461)を用いました。

  1. 他種のイカで効果が確認されている「神経締め」(図3)と「酸素充填」の効果検証

 「神経締め後に下氷」、「締めイカ酸素パック」(図4)、「苦悶死後に下氷」、の3通りの方法で保蔵したケンサキイカの48時間後の肉の透明感、およびK値を調べた結果、「締めイカ酸素パック」では、その他の方法と比較して肉の透明感を維持できました(図5から7)。一方、K値では保蔵方法による有意差は認められませんでした(図8)

神経締め後、冷海水と酸素ガスを充填したビニール袋に収容する。

  1. 「締めイカ酸素パック」で保蔵したケンサキイカの品質評価

 島内の料理店において、「神経締め後に下氷」、「締めイカ酸素パック」、「苦悶死後に下氷」の3通りで保蔵(48時間)したケンサキイカ(刺身)の官能検査を行った結果、8割の方から”「締めイカ酸素パック」で保蔵したケンサキイカが最も美味しい”との回答が得られました(表1)。

【成果の活用と反映】

 鮮度保持対策を施したケンサキイカを島外市場に試験出荷し、効果の検証をおこなった後、地元への導入・普及を図っていきます。

(滝尾健二)

図1図2

図1 伊豆諸島における一般的な      図2 水揚げ直後のケンサキイカ

   ケンサキイカ出荷形態(下氷) 

図3図4

図3 神経締め                図4 締めイカ酸素パック

図5 図6

図5 「神経締め後に下氷」で保蔵した   図6「締めイカ酸素パック」で保蔵した)

   ケンサキイカ(48時間後)      ケンサキイカ(48時間後)

図7

図7「苦悶死後に下氷」で保蔵したケンサキイカ(48時間後)

図8

        図8 ケンサキイカK値測定結果

 

     表1 ケンサキイカの嗜好順位結果    

 

パ ネ ル

   試  料

A

B

C

№1

1

2

3

№2

2

1

3

№3

2

1

3

№4

3

1

2

№5

2

1

3

№6

3

1

2

№7

3

1

2

№8

3

2

1

№9

3

1

2

№10

3

1

2

合計

25

12

23

 

 ※ A:「神経締め後に下氷」で保蔵

   B:「締めイカ酸素パック」で保蔵

   C:「苦悶死後に下氷」で保蔵